牝奴隷たちと御主人ちゃん 82
エミリーもしゃべる神官衣装を着た黒猫に驚いたが、思わず声をかけた。
「ダメ、見ないほうがいいよ!」
キヨマサが中にてくてく歩いて行こうとしているので、ガルディアスはキヨマサのしっぽをグイッとつかんで持ち上げた。
「やめとけって」
「離せ、行かねばならぬのだ!」
ネコマタのキヨマサに、シャロンとエミリーは縦穴を登れないから、どうにかならないかお願いしてみた。
「ふむ、もう戻るつもりはなかったのでなぁ。
……フニャアァァ?」
キヨマサと三人の体が突風に吹き上げられて、縦穴から飛び出してきた。
ミニ竜巻でネコマタのキヨマサと三人を縦穴から取り出したのは、美貌の魔導師の少年である。
シャロンとエミリーは気絶。
ネコマタのキヨマサは立ち上がったがふらふらして、パタンと仰向けに倒れた。
最後に少年の前にドサッと降ってきたのはガルディアスである。
「おお、痛てぇ。もっとロープを下ろすとかあるだろうに。いきなり天井に叩きつけるほど竜巻で飛ばさなくてもよぉ……」
美貌の少年が、這いつくばって文句を言ったガルディアスを見て微笑した。
「なら、君だけ一人、中に戻そうか?」
「よせよ。手間がはぶけて助かったぜ」
ガルディアスが立ち上がる。竜巻で急旋回させて、ガルディアスだけ天井に叩きつけてみたと知ったら少年にさらに文句をつけていたにちがいない。
触手の森。
三人が通過する前に捕獲された女戦士がいる。
彼女は皇子エルヴィスを追って暗殺するために放たれた刺客の一人であった。
蠢く触手に手足を絡まれているだけではなく、剣で触手に抵抗して斬りつけたので、切断された触手から吹き出した粘液で、体中ねとねとにされている。
船から脱出して、途中でオーク二匹と遭遇。戦闘となりオークの手足を切断して戦闘不能にするほどの腕前である。しかし、その剣技の冴えも触手の群れには逆効果だった。
神聖ベルラント王国の信者の中には、正式には聖職者に認められていないが、信仰を利用されている傭兵たちがいた。彼女もその一人である。
庶民から皇子となったエルヴィスは実は王の隠し子てあり、エルヴィスが王位を継承するなど血統を汚す背徳行為だと信じ込まされている。
エルヴィスを抹殺することが神聖ベルラント王国の権威を守ることだと、各地に放たれた刺客たちは暗躍していたのである。