牝奴隷たちと御主人ちゃん 69
少年の手がティアナの陰花からすっと離れる。ポチも乳房から手をぱっと離した。
「どうしたの?」
「ティアナちゃんじゃなくなっちゃった!」
「そうだ、ポチ。リリムだよ」
「あら、ばれてるのね」
ティアナが上半身を起こしてクスクスと笑う。
同じ顔、同じ声なのに雰囲気がちがう。
「ティアナちゃん、どうしたの?」
「ポチ、心配ないよ」
少年は抱きついてきたポチの頭を撫でてやる。
少年はティアナの顔をまっすぐ見つめて、微笑すると、指輪に軽くふれてからティアナに話しかける。
「リリム、お前を探してガーバリムが現れたぞ」
「しつこい奴……」
「お前とガーバリムの関係は僕には関係ないが、ティアナをガーバリムに喰わせたらどうなるかな?」
「ダメ、絶対ダメ、あの中は魔界につながってるから、あたし、こっちに来れなくなっちゃうよ」
「魔界?」
少年がティアナと話している間、ポチがじーっとティアナを見つめて何か言いたそうにしている。
「おっぱいおっきくならないよ!」
それを聞いてティアナが苦笑する。
そして、少年にポチは苦情を言う。
ティアナがおっぱいミルクをたくさん飲んだら、ポチもおっぱいおっきくなると言われた……と聞いて、少年もティアナと同じく苦笑した。
「子供の夢と憧れを利用するとは」
「まちがってないと思うけど」
二人の顔をポチが見上げて、どうなのよ、はっきりしてよ、という顔をしている。
「ドラゴンちゃんはかわいいから、おっぱいおっきくなくても、みんな大好きよ」
「えー、ほんとに?」
「そうよね?」
「ポチはかわいいぞ」
二人に言いくるめられて、ポチが笑顔になる。
ティアナが手まねきすると、ポチが抱きつく。
「と、とにかく、ガーバリムになんか喰わしたら絶対に許さないからね!」
ティアナが少年に言うと、目を閉じてポチを抱いて寝そべる。穏やかな寝息。
「やれやれ、二人とも静かに寝るんだよ」
「はーい!」
だから少年は三匹のオークもどきを見て、ガーバリムの中にある「魔界」からこれは出てきたのだと、すぐに考えた。
海賊ギルが人魚のマリンと親睦を深めていたり、新種オークが邪神ガーバリムから出てきた時には、サラとオルガは儀式の間で眠り続けていた。
「二人には訓練を受けてもらう」
少年がサラとオルガの二人をダンジョンに作られた儀式の間に呼んだのは、宴会から三日後のことだった。三日間で少年とネコマタのキヨマサは儀式の間と眠りの石棺を用意した。
「本来、この海底ダンジョンは皇女ティアナのような祓いの巫女が、淫魔と戦うための訓練やダメージの治療を行う聖地なんだ。
邪神ガーバリムのような淫魔と戦うには、特に狙われやすい女性は訓練が必要になる。
祓いの巫女は、快感に耐える訓練を詳しく説明はしないけど、幼い頃から行い続けている。そうしなければ淫魔と対決した時に心が壊されてしまうからだ。
淫魔と戦うための試練を受けてもらう」
サラとオルガは眠りの石棺の中に、それぞれ全裸で仰向けに身を横たえる。
石蓋を閉じて、呪符で封じる。
石蓋には小さな穴がたくさん開けてあり、石棺の中でも呼吸に支障はない。
祭壇に魔剣を置いて、ネコマタのキヨマサが長い呪文を歌うように唱える。
サラとオルガからは石棺の中で、石蓋の小さな穴から見える光が星のように見える。
ネコマタのキヨマサはサラとオルガの意識だけを魔剣と同調させ精霊の領域に飛ばした。
石棺の中の二人の身体は、微かなゆっくりとした呼吸となり、心臓の鼓動もゆっくりと打たれるようになる。肌は冷たくなる。
サラとオルガは冷たい石棺の感触が消えていき、春の日だまりのような暖かさを感じる。
寝そべったまま浮遊して星空に吸い込まれていくような感覚があり、目の前が気絶するときのようにすーっと暗くなっていく。