牝奴隷たちと御主人ちゃん 33
ホムンクルスは精液や他の触媒を容器に入れて作られるが、老人は容器のかわりにサリーヌの肉体に、ホムンクルスを作り出して飼っていた。
ホムンクルスと肉体が同化していくとサリーヌは若返った。しかし、最後は頭脳まで同化すると、生きた人形になるのを老人は知っていた。
「生きた人形でも貴方はサリーヌの十八歳の頃の肉体を愛していた。
サリーヌはなぜ若返りたいと願って老人に利用されるのを受け入れたか、貴方にはわかるかな?」
サリーヌの願いはグレゴリーにずっと愛されていたかったのだ。しかし、肉体は老いていく。
老いたサリーヌをグレゴリーは愛さない。
「ホムンクルスと同化したサリーヌは娘の返り血をあびてしまった。
精液以外にも血液を摂取すればホムンクルスは生きられると知ってしまったのだ」
「だから、若い女性を殺して血を啜らせ、男性奴隷から精液を摂取させたというわけか。
そうしなければ、貴方がホムンクルスに餌にされて殺されるから」
グレゴリーの館に近づく者は女性は生きて帰らない。奴隷商人はそれを知っていた。
魔導師の老人は領主の叔父。この街の領主はグレゴリーには手を出さない。
領主の一族が行ってきた禁忌の研究が外部に知られることがないように。
「君はどうするつもりなのかね?」
グレゴリーがため息をついた。
そして少年とサラを見つめて言った。
サラは、変態領主が絶対に手を出さないグレゴリーという領主の親戚にあたる男がいると聞いていた。
(街で宿泊したほうが安全だったかもね)
サラがいきなりグレゴリーを斬らないように少年は大剣をテーブルに置かせたのだが。
「メアリー、君はどうしたいの?」
少年はグレゴリーのそばにいるホムンクルスのメアリーに、声をかける。
「もううんざり、終わらせて」
グレゴリーは悲鳴を上げた。
椅子をひっくり返しながら立ち上がり、泣きながら全力で走って、書斎から逃げ出した。
「メアリー、僕のダンジョンで暮らせばいいよ。君の料理はおいしかったからね」
「よろしくお願いします。御主人様」
サラは大剣を手にして、グレゴリーを追った。
館の外にグレゴリーは逃げ出していた。
追いついて、殺害した。
「まったく、若い女の子しか愛せないなんて、女の魅力がわかってないわね」
この騒ぎかあったが皇女ティアナとポチは、二階の客室で朝までぐっすり眠っていた。
ポチはドラゴンの姿に戻った。
メアリーはのんびりダンジョンまで歩いて行くというので、少年はフィルに渡す手紙を持たせた。
「ダンジョンでフィルに会ったら、フィルをお姉様って呼ぶように。それから手紙を渡すんだ」
「はい、御主人様」
メアリーはドラゴンに乗った三人が見えなくなるまで空を見ていた。
そして、館に火を放つと立ち去った。
貴重な書物が失われると収蒐家どもがこの光景を見たら、火の中に飛び込んだかもしれない。
メアリーのお弁当を食べながら天空の旅をしていると、ポチが急停止した。
「ちょっと、どうしたのよ!」
少年が下を指さすと海が広がっていた。
「きれいですね、下にも空があるみたいです」
皇女ティアナが感動しているが、サラはそれがどんな意味かすぐわかった。
「どこに着陸するの、このまま休憩なしなんてことは、まさかないわよね……」
「えっ、どうしましょう……」
すると、少年は地図を広げて島がないことを教えた。サラとティアナが顔を見合わせる。
「島はないけど、みんなで下を見て船を探そう。見つけたらそこで休憩だ」