牝奴隷たちと御主人ちゃん 24
乳房を揉んでいる「御主人ちゃん」の手首をティアナの手は、ぎゅっとつかんでいた。
「ああぁん、あぁっ……んっ……もう、だめぇ……」
ティアナの手から力が抜けて離れた。
ここで呪文の詠唱を止めて、乳房から手を離す。
すると、ティアナは「御主人ちゃん」にしがみついた。熱い吐息を洩らして目を閉じたままティアナは抱きついたまま、しばらくじっとしていた。
「もう、落ちついたかな?」
「……はい」
ティアナが抱きついていた華奢な腕を離すと「御主人ちゃん」はゆっくりと起き上がる。
そして、ティアナに手をさしのべた。
手をつかんでティアナも起き上がり、「御主人ちゃん」と二人で浴槽のお湯の中に入った。
(勃起してるのに、犯そうとすればできたのに……)
「あまりじっと見られると気になるよ」
「あっ、あの……はい。……すいません」
微笑した「御主人ちゃん」が皇女ティアナにそっと唇がふれるだけの優しいキスをした。
「君がさっきみたいに乳房が敏感になって落ちつけなくなるのは子供の頃から?」
「……はい。胸がふくらみ始めた頃からです」
「乳房や乳首をさわっていて、ミルクは出たことはないかな?」
「たまに、本当に少しだけ出ることがあります」
恥ずかしいのか小声で目を合わせずに皇女ティアナは質問に答えていた。
処女ではなくなると大量のミルクが出るのかと「御主人ちゃん」は考えて黙っている。
「あの……やはり、私は、普通の女の人たちとはちがうのでしょうか?」
「うん、まあ……」
「……そうですよね」
そのまま皇女ティアナの目から、ぽろぽろと涙があふれてきた。
「大丈夫、僕がかならず君の体の秘密を解き明かしてあげるからね」
そう言ってからわずか三日後、少年は王と宰相との謁見を希望してきた。
ティアナは一瞬、裏切られた気がした。
(ああ、この少年も皇女という身分だけでしか、私を見てくれていなかった。
私という人間をそのものを、まっすぐ見てくれていたわけてはなかったのですね)
皇女ティアナは王から死霊祭祀書を手にいれて帰国するように命じられた。
そうすれば聖女としての責務である降臨の儀式を行うことができると告げられて。
この少年は皇女の協力者として褒美でももらう気なのだろうか、とティアナは考えた。
死霊祭祀書を所持している少年を、王と宰相に謁見させる。
王家の呪縛から解放されることが、ティアナの本当の望みであった。
旅をすれば何かが変わると思った。
しかし、これで旅が終わろうとしている。
現実は何もかわらない。
絶望がティアナの心を握りつぶそうとしている。
胸の奥が、心が、痛くて泣きたくなる。
「約束したからね。
僕は王と宰相に降臨の儀式の廃止を要請するよ。
それが終わったら、君も一緒にここに帰ろうね。
僕は君のことがもっと知りたいんだ」
それを聞いた皇女ティアナが目に涙をためて、笑顔でこう言った。
「はい、よろしくお願いします!」
旅はまだ終わらない。
「御主人ちゃん」が何が知りたいと言っているのかをティアナは完全に誤解していた。
王と宰相に降臨の儀式の廃止を要請して断られたら、何を少年がするつもりなのかも、ティアナはわかってはいなかった。
ちなみにフィルはダンジョンで留守番である。
人質の皇子エルヴィスを逃がさないように。