言葉を吸い取るように、俺は身を乗り出して瑞穂の唇を奪った。
　一瞬大きく見開かれた瑞穂の瞳が、潤み、閉じられる。
　片手はいわゆる恋人つなぎを維持したまま、もう一方の腕で瑞穂の腰を抱き寄せた。
　舌先で瑞穂の歯茎をつんつんと刺激することを繰り返し、口を開かせる。
　あの会話の全部が嘘ではないのかもしれない。
　反応の初心さに、俺はそんなことを考えた。
　舌をいれ、瑞穂の口腔に触れては引き戻す。
「ンンッ…ン、ン、ゥン…」
　ちゅ、ちゅ、ちゅ、とリズムを取って、舌を出し入れ。
　それに合わせて、瑞穂の身体の一般的な性感帯の感度を操作する。
　手を握る。
　腰から背中を撫でさする。
「ム、ムフ…ン、ムフフン…フゥン…」
　ツンととがった瑞穂の鼻先から溢れる吐息が艶かしい。
　強く閉じられた瑞穂の目元の火照りは艶やかに色づいて、俺の興奮を加速させる。
　瑞穂の身体が揺れ始める。
　視線を落とせば、妖しく蠢く腰つきが何とも言えずセクシーだ。
　思わず強く抱き寄せる。
　それは、膨れ上がった怒張を瑞穂の腹部に押し付ける結果となり、俺と瑞穂、ふたりの動きを止めた。
「……」
「……」
　離れる唇、見つめ合う瞳。
　やがて、瑞穂の腕が俺の背中に回され……彼女の方からキスを求めてきた。
　舌が絡まり合う。
　瑞穂から腹部を俺の怒張にこすりつけてくる。
　お返しに俺は彼女の身体を愛撫し、感度をアップしてやった。

　俺と瑞穂はもつれ合うように倒れこむ。
　荒い呼吸を続ける瑞穂に構わず、俺は再びキスを強要し、彼女の全身を撫で回す。
　不感症とか、絶対うそだよな…。
　だとすると、マネージャーもグルか。
　彼女を愛撫しながら、勝手に腰が動く自分を自覚する。
　シャツをまくりあげ、贅肉のない、しかし柔らかな彼女の腹部へと、硬くて熱いものを擦りつけてしまう。
　瑞穂が二度目の絶頂に達した。
　軽く首を振ってイヤイヤをする彼女に構わず、俺は彼女の唇を犯し、全身を愛し、肉棒を腹部へと擦りつけ続ける……このままだと、瑞穂のお腹に出しちゃうな、などと考えながら。
　俺の腕の拘束から逃れるように、瑞穂の体がのけぞった。
　３度目。
　逃がさない。
　ずり上がっていく身体を引き寄せ、片腕で強く抱きしめる。
　感度アップ。
　４度目。
　俺は腰を震わせながら、彼女の白いお腹に欲望を吐き出した。

　用意してあったタオルでぶちまけた欲望を拭いとる。
　そして俺は、瑞穂のお腹を優しく優しく撫でていた。
　荒かった呼吸が穏やかになり……やがて、ぽつりと瑞穂がつぶやいた。
「お腹…好きなの？」
「女の身体で特に嫌いなところはないなあ…」
　声を出さずに笑った……そんな気配がした。
「成り行きでそのまま犯されちゃうかと思ったけど」
　そう言って、瑞穂が体を起こし…起こし…。
「ちょっと、お腹から手をどけてよ」
　はいはい。
　瑞穂が体を起こす。
「なんで？」
「夢中だったので」
「嘘……夢中なあなたと、冷静なあなた、その両方を感じたわ」
　俺は瑞穂を見つめ。
「憧れの国崎瑞穂が、その手で俺の息子を支えて、自ら腰を下ろして受け入れてもらうのが夢です」
「……馬鹿ね」
「いかにも」
　瑞穂はちょっと笑った。
「嘘つき」
　いや、本気で夢なんですが。
　セックスになれた関係ではなく、初めてのセックスがそれ……などと力説はしない。
「……不感症は嘘、セックスが怖いのはホントってとこですか？」
　しばらく、俺と瑞穂の視線が重なりあった。
　ぽつりと。
「だいたい、正解」
　なるほど。
　さりげなく会話を続けているけどさ、今も快感メーターを使って彼女の感度を操作してるんだぜ。
　なんていうか、俺との会話が楽しいとか、心地よいとか刷り込むためだけど。
　再び手を握ったりしてみる。
「…ぁ」
「瑞穂の手は綺麗だね」
「あ、ありがと…」
　瑞穂の返事がどこかぎこちない。
　ちなみに、『瑞穂』と『綺麗』のタイミングで感度を弄りました。
「うん、俺は瑞穂の手が好きだ」
「そ、そう…なんか、変な感じ…」
　最初に比べたら、今の瑞穂はノーガードも同然ってとこ。
　ただ、不審感は持たれたくないからね。
「ひっ…」
　瑞穂の手を導いて、再充填を完了した俺のモノに触れさせた。
　握るんじゃなく、触れさせた、だからね。
　多分、男の性器っていうか、チ〇ポに対する恐怖心は本物っぽい。