続・全てが叶うスマフォ 16
茜が元気になって安心して、俺は改めて梓のことを考えた。
「性同一性障害」って言ってたな。
もし、それで本当に体も男になりたい、と思ったなら、あのスマホを持っていた時期ならその力で簡単に実現できたはずだ。
そして俺たちの記憶も変えて、もとから「委員長の双子の弟、梓」がいたことに。
…そうしなかったということは、本人は恒久的に体を変えるつもりはないくらいには、自分の体を受け入れていることになる。
…では、まさか
俺は成人向け作品のジャンルのひとつを思い出した。
あまり想像したくはないのだが…
気になった俺は、スマホにこのように打ち込んだ
『もし、一宮梓がふたなりだったら、本スマホのディスプレイに[Yes]と表示する。そうではないなら[No]と表示する』
その応えは―
『No』
…思わずため息を漏らしてしまう。
…正直、俺はそれを望んではいなかったので…
しかし、そうではないといっても、梓が自分の身体を変化させることはいつでも出来る。
つまり、茜以外の被害者?が生まれる恐れだって無きにしも非ず…
今後も警戒は必要だろう。
もちろん、一人だけ上半身裸にするのはかわいそうなことは間違いなかった。
でも“一宮梓が自ら望んで上半身裸になったとしても誰も変に思わない”とかだったら、梓にとってもよかったのかもしれない。
制服採寸の場面で俺が下着姿の女子と混じってもおかしくなかったように、俺は、上半身裸の男子に交じって梓が上半身裸でいるシーンを想像した。
が、そんなことを考えている内に朝が来た。学校へ向かう俺。今日は1日「校内バレーボール祭り」の準備に充てられる。
…昨日は茜と梓のことばかり考えていたが、もうひとつ、大事なことがあったと思い出す。
今日から俺のクラスにやってくる女子生徒・望月志緒理。
数学担当で離婚した俺の母親の妹・由佳里さんの娘、というのだが…
由佳里さんの言い方では、志緒理の父親は俺の親父というような…
複雑な思いがめぐる。