性先進国 9
その結果、セクロスの美女目当ての外国人が大量に押し寄せ、次いで海外資本も進出して来た。
そしてセクロスは王政時代に比べ、格段に豊かな国へと発展を遂げたのだった。
「…でもこの急激な変化を受け入れられない一部の人達は、性の解放を今でも頑なに拒んでいるのよね」
「それなら聞いた事があるよ。確か“セクロス民族義勇軍”だっけ…?」
セクロス民族義勇軍はシタルネンによる性解放政策と、それに伴う外国人の大量流入に反発した国粋主義者達が作った秘密結社で“反シタルネン”そして“外国人排斥”をスローガンとして掲げ、けっこう過激な事もしている。
「…まぁ、日本人も幕末の頃は“尊皇攘夷”とか言って暴れてたらしいし、どこの国でも一度は通る歴史なのかも知れないな…」
…その後、リズが教えてくれた洒落たレストランで二人でディナーを楽しんだ。
その後今度は一郎が行きつけのバーをリズに紹介する。
開放的な雰囲気で気楽に飲める所が一郎は気に入っている店だ。
「そう、一郎は今観光業界にいるのね。」
2人はカウンターに並んで座っているが、片手でカクテルを持ったリズは
すでにもう片方の手を一郎の股間に伸ばし、ズボンの上からさすっている。
この辺りは真にセクロス的である。
突然、照明が消えた。
悲鳴…
「我々は、セクロス民族義勇軍 サポーター連のメンバーだ!」
突然のことにうろたえる一朗だったが、リズはそれほど取り乱してはいなかった。
「義勇軍でも、サポーターなら、そんなに頭いい連中じゃないわよ」
ここでの一朗の記憶は、ここで途切れる。
気が付いたら、コンクリートで囲まれた部屋にいた。
光は、小さい窓から漏れてくるもののみ。そして、一朗は、何も服を着ていなかった。
「リ…ズ?」
「そうよ」
隣では、リズが起き上がっていた。やはり、何も服を着ていなかった。
ガチャリ、扉が開いた。
暗くてよく分からないが、軍服のようなものを着た女性が扉の向こうから2人に近づいてきた。
右手には、何か光るものを持っている。
一朗は、それはナイフだろう、と思った。一朗は、それが銃でなかったことにちょっとだけほっとした。
「日本人か?」
その女は、一朗に向かってそう言った。
「はい」
ここで嘘をついても仕方がないし、日本人なら、外国人を嫌う人の間でも比較的好印象なはずだった。
「…すまない。日本人自体に恨みは無い。我々の大義のため、協力していただきたい」
その女は、リズより少し年上の、30歳くらいに一朗には見えた。
「何を要求するつもりなの?」
リズは、うろたえをかけらも見せずに、その女に聞いた。
「君はセクロス人か?」
「ええ!」
「重ねて、巻き込んでしまってすまない…我々は、君達を人質に、捕まった仲間5人の釈放を、政府に要求する」
「…何だって!?」
叫んだのは一郎だった。
「そんな事をしても無駄だ!セクロス政府が応じる訳が無い!今すぐ僕達を解放して自首するんだ!」
「そういう訳にはいかないんだ」
リズは尋ねる。
「…ねえ、もし政府があなた達の要求に応じなかったら、私達はどうなるの…?」
「…その時はその時で考えるさ…」
女は意味深な言葉を残して去って行った。
「あぁ…何てこった…」
一郎は頭を抱え込んだ。
「大丈夫よ、一郎。サポーター連の連中は人質を殺すような真似はしない…と思うわ。それに、いずれ警察がこの場所を突き止めて救助に来てくれる…はずよ」
その言葉には何の根拠も無かったが…
「そ…そうだね。きっとそうだ…」
…今はその可能性を信じるしか無かった。