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性先進国
官能リレー小説 - その他

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性先進国 21

「イテスデンで…?」
教官は眉を潜め、そして言った。
「…それは認められないな。会うならここでだ。ここでなければ駄目だ」
「そうですか……では諦めます」
「何だってぇ…!?」
「母の大切な仕事の邪魔をしてまで会いたいとは思いませんので…イテスデンでしたら会いますが…」
「ぐぬぬ……解った!イテスデンでならば会うんだな!?」
「はい!」
「その代わり君には民族党の随行員が常に付く事になるぞ!それでも良いんだな!?」
「…!」
アレクセンは一瞬だけ躊躇ったが、それでもここで面会する事に比べれば遥かに良い条件だという事にすぐに気付いて、胸を張って答えた。
「…解りました!」
こうして、少年は理不尽な大人達との“戦い”へ向けての第一歩を踏み出したのであった…。


第三章 性と、血と、金と…

「嘘!?アレクセンが…!?」
その民族党青少年団キャンプからの通知に目を通したリズは見る間に真っ青になった。
「どうしたの…?」
一郎が心配そうに尋ねる。
「イチロー!どうしましょう!?アレクセンが民族党の思想改造施設に送り込まれてたわ!」
「何だって!?それで、彼は無事なのかい!?」
「解らないわ!でも施設からの通知には“アレクセンは私と会いたがっているから、指定された日時と場所に来い”って…!」
「そうか…それじゃあ、一応は無事と考えて良いのかな…行くのかい?」
「もちろんよ!」
「う〜ん…でも向こうには当然、随行者がいるだろう?かつてはシタルネン支持者として活動していた君が民族党の人間と接触するのは危険じゃないかなぁ…何となく裏があるような気がするよ…」
「でも行かなかったらアレクセンがどうなるか解らない!私は行くわ!例え殺されても…私あの子の母親ですもの!」
母は強しだな…と一郎は思った。
「…解った。でも向こうが罠を張ってるかも知れないのに、ただのこのこと出向いて行く訳にもいかない。こっちもいざという時のための手を打っておかないとね…」
「どうするの?」
「それをこれから考えるのさ」
そんな話をしているとリズのスマホが鳴ってメールの着信を告げた。
「?…知らないアドレスね……あっ!!」
「どうした!?」
「このメール、アレクセンからだわ!」
「本当かい!?何て書いてある!?」
「ええと、これって、日本で作られたもの…?」
 リズは、そういってスマホを一郎に渡した。
 そこには、日本にいた時には見慣れていた、絵文字から進化した小さい画像が2つ貼ってあった。
 一郎は“日本発のこの文化が輸出されている”と聞いたことがあったが、実際にはじめてみて、こんなときだったがちょっと嬉しかった。
「途中で施設側に読まれることを恐れたんだろうが…これはかえって怪しいような…」
 凸型の建物の絵と、笑った顔の絵。
「ええと、これは学校で間違いない、と思う」
「アレクセンの学校に行け、っていうこと?」
「あと、この笑顔…友達??」

 その時、支店の扉が開いて、アレクセンと同年代の少年と少女が一人ずつ入ってきた。
「アレクセン スフェベンソン君の、お母さんですか?」
「はい、そうですが…いらっしゃいませ…」

 彼らはカウンターまで来た。
「僕はエマン リンデグレン、アレクセン君のクラスメートです」
「私はナニー ヘドメル、あの選挙前まで、アレクセン君のクラスメートだった者です」

「アレクとお母さまの危機と、お母さまの職場を、今朝メールで知って、学校抜けだして、来ました」
「ありがとう!こちらにも、今さっき、施設からと、本人から、連絡が来たところよ」
「そうなんですか!実は、私たちも、細かいところは分かっていないんです。施設からの連絡は、どういうものだったんですか?」

 リズは、彼らに、指定された日時と場所に、そこに行くつもりだ、と説明した。

「ああ、あそこなんですね…やはり…あそこ会議室なんてあったのか…」

 エマンは、カウンターの上にあった地図を指差した。
「この公衆浴場は、ここ、ほとんどイテスデンとトゥルクィ郡の境目にあるんです…裏口から100mも行くと、もうトゥルクィ郡で」
「そう。あの日から、週末にはここに来て、アレクとかとセックスしたんです」

 ナニーは、ごく普通にそう言った。

「だから、状況によって、アレクやお母さまが、郡の方に誘導されてしまえば、もう彼らの思うままになってしまうわけです」
「ありがとう。じゃあ、何としても、そっちに行かないようにする」
「あと、ここに来るバスの中で、二人で考えた作戦なんですが…うまくいけば、アレクももう施設に戻らなくていいかもしれません」
「えっ…どんな作戦?」
 リズは身を乗り出した。

「メディアを呼ぶんです。国営とまでは行かなくても、政府寄りのメディアを。メディアの前では、民族党の連中も、過激なことはできないでしょう」

 一郎は口をはさんだ。

「メディアを、何と言って呼ぶ?“親子の対面”と言ってもあまりニュースバリューないんじゃないか?」

「政府も、親子の縁を無くしたいわけではないんです。しかも、民族党によって施設に送りこまれた子と親の対面。これなら、政府寄りのメディアは乗ってくると思うんです」
「それで…どっちも望んでいないかもしれないですが、形だけでも…『親子一緒に暮らしたい』って言えば、旧来の価値観を大事にする民族党も黙らざるを得ない、って思うんですよ。そうすれば、アレクは、もう自由の身に」

「なるほど…」

 一郎は、さすがはこの国の子供達だ、と思った。

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