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性先進国
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性先進国 19

彼は口ごもった。模範生を目指そうとしているのに、ここのルールにおいては、それと対極にいる親について、どう言ったらいいのだろう?
 悪く言ったら高評価とも思われるが、相手は家族の大切さを教えている聖職者だ。

 「安心しなさい。君の母親については、我々は基本的な情報は持っている」

 教官は机上の紙をめくった。

 「我々の立場は、神の前ではすべての人間は尊い。君の母親がどのような考えを持っていても、それを責めたりはしない」
 「はい…」

 教官は一息ついて、言った。

 「君は、母親に、もっと愛してほしかったのではないか?」
 「はい。そう、思いました」

 そんなことまで調べているのだろうか…と彼は思った。

 「目を閉じて、想像してごらん。君は、父親と、母親に愛される家庭にいる」


 彼は言われた通り目を閉じた。父親…想像したこともなかった。計算では、リズは今のアレクセンの年齢の時に彼を産んだことになっている。父親のことなんて、今のセクロスの子供の多くがそうであるように、聞いてみようとすら思わなかった。

 「…つまり、君の父と母は、神に誓って、一緒になったことを、想像してみなさい」

 それは、結婚、っていうことだな、ということは分かった。でも、それは、18歳以上でなくてはできない。
 そうすると…模範生になるためには、口応えと取られかねないことはしないつもりだったが、彼は聞くのを我慢できなかった・

 「教官、もしそうなら、僕は、生まれないのではないですか?」
 
 教官は、ほほえみを浮かべて、ゆっくりと答えた。

 「そんなことはありません。君は生まれてくる運命だった。神の導きで、必ず、君は生まれるでしょう。名字は、君の母親のスフェベンソンでは、ないだろうが、君は、必ず、居ます」 

「はあ…」
何だか上手くはぐらかされた…というか、かなり強引に話を終了させられたような気がしてならなかった。
聖職者という人々が本当に心の底から神を信じているとすれば、彼らの思考はある一定以上の水準には決して及ばないのだろうな…とアレクセンは思った。
神様がそうなさった事なのだから…。

教官は言った。
「話を戻そうか、アレクセン。君は君の母親に対して、どうしてもらいたいね?」
「はあ…?」
アレクセンは困る。
今さら母親に対して望む事など何も無かった。
愛して欲しかったのではないかという問は肯定したが、唯一の肉親である母親と離れて暮らすようになって既に久しい彼は、愛というのは一方的に与えられる物ではなく、相互に与え合う中で育んでいく物である事を、同級生達との付き合いの中で既に理解していた。
他国の同年代の青少年達に比べてかなり成熟した人間観だが、これもシタルネン教育の賜物と言えよう。
その是非はまた別の問題である。

アレクセンが何も答えないでいると、教官が口を開いた。
「…君は母親と一緒に暮らしたいとは思わないかね?」
「…いえ、特には…」
アレクセンは否定した。
すると教官は身を乗り出して来た。
「いいや、そんな事は無いはずだ。君はさっき母親に愛して欲しかったと言った。君は母親の愛を求めているんだ。君は良い子だ。だから母親の迷惑になるまいと思って嘘を言ってる…そうだろう?無理をしなくて良いんだよ。ん?本当の気持ちを話しなさい」
(…何なんだ…この人は…)
教官は一息つき、そして言った。
「…そうか、言えないんだね。なるほど…この問題は君の母親を交えて、じっくり話し合う必要がありそうだ。君の母親をここに呼びたまえ」
「…っ!!」
ここに至ってアレクセンはようやくこの教官の目的を悟った。
彼の…いや、彼らの目的は自分を使って母を呼び出す事だったのだ。

事実、彼らの目的はリズであった。
リズがアレクセンの呼び掛けに応じて一歩でもトゥルクィ郡内に足を踏み入れたが最後、何とでも理由を付けて身柄を拘束し、後は徹底的なヤランネン主義の洗脳コースだ。
熱心なシタルニスト(シタルネン主義者)として地元ではちょっとした有名人だったリズの思想改造は、民族党にとって恰好の宣伝材料となろう。

教官は言った。
「アレクセン、自分の気持ちに素直になるんだ。もし君が私に心を開いてくれなければ…君はいつまでもこのキャンプから出られないんだよ?それでも君は良いのかな…?」
「……」
それは体の良い脅迫だった。
(最低だ!これが大人のする事なのか!?)
アレクセンはありったけの侮蔑を込めて教官を睨み付けた。
「…何だね?その目は……ふむ…どうやら君には“教育的指導”が必要なようだ。良いだろう…おい!入って来い」
教官が隣の部屋に向かって言うと、ドカドカと他の教官達が入って来た。
「こいつを懲罰房に入れてやれ!暗い穴蔵の中でじっくり考えるが良い!」

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