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性先進国
官能リレー小説 - その他

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性先進国 18

 アレクセンが矯正キャンプの入口から入るとき、ちょうど矯正対象者が一列に並んで出てくるところだった。
 彼は、その1人を見てはっとした。寮で同じフロアにいた先輩だったのだ。

「班長!後輩に、歓迎の言葉を掛けることを、許可願います!」

 その先輩は、アレクセンに気づいてすぐに、敬礼しながら大声で先頭の人に向かって言った。
「許可する」

「アレクセン君!ようこそ矯正キャンプへ!ここは、忘れていたセクロス人としての誇りと、家族の大切さを、思い出す場所である!」

 アレクセンはびっくりした。こんな大声を出す先輩だったという記憶はなかった。
 先輩が近づいてきて、彼は身構えた。男しかいない場所…もしかしたら、男同士で…ということもあるのだろうか…

 でも、ヤランネンは、現在セクロスでは影響力が極めて少なくなった、ある一神教を再び流布させようとしている、と彼は聞いたことがあった。
 その教義なら、確か、それは、だめだったはず、ということも彼は知っていた。

 先輩は彼の耳元に口を近づけた。彼は縮こまって、目をギュッと閉じて歯を食いしばった。

「模範生になれ。早めに“社会奉仕”で、下界に行けるぞ」

 先輩は、彼に小声でそう告げた。

アレクセンはハッとして、それから無言で小さく頷いた。


そして矯正キャンプでの生活が始まった。
それは一言で言えば監獄…いや、地獄だった。

起床は朝5時。
寝ぼけている暇など無い。
3分以内に寝間着から青少年団の制服(ボーイスカウトの制服に似ている)に着替え、ベッドを綺麗に整えて直立不動の姿勢を取る。
監督官が来て一つ一つのベッドをチェックし、綺麗に整っていないと…
「やり直おぉーしっ!!!!」
…と言って布団を引っくり返していく。
その者は速やかに床にぶちまけられた布団や枕やシーツや寝間着を直しに掛かる。

…カツ…カツ…
「やり直おぉし!!!」バサーッ
…カツ…カツ…
「やり直おぉし!!!」バサーッ

…朝はこんな感じ。
その後、行進して食堂へ行く。
列のまま食堂に入ると入り口でワンプレートの皿を受け取り、そのまま進み、配膳される。
食事は“質素”を絵に描いたような内容。
この日のメニューはパン、野菜だけの薄いスープ、サラダ、ミルク。
そのまま席に着く。
だがまだ食べられない。
民族党青少年団の心得を斉唱させられるのだ。

『セクロス民族党青少年団 団員心得』
ひとつ、セクロス青少年は童貞を守るを本分とすべし。
ひとつ、セクロス青少年は包茎を正しくすべし。
ひとつ、セクロス青少年は短小を尚ぶべし。
ひとつ、セクロス青少年は早漏を重んずべし。
ひとつ、セクロス青少年は自慰を旨とすべし。

…意味が解らない。
実は意味なんて無いのかも知れない。
「「「ひとーつ!セクロス青少年は童貞を守るを本分とすべし!」」」
「馬鹿者おぉっ!!!声が小さあぁぁい!!!貴様らタルんどると飯抜きにするぞおぉぉ!!!もう一度おぉぉ!!!」
「「「…ひとおぉぉつ!!!セクロス青少年は童貞を守るを本分とすべえぇぇし!!!ひとおぉぉつ!!!セクロス青少年は包茎を正しくすべえぇぇし!!!…」」」
寝起きに空腹でデカい声を上げさせられてフラフラとなった所でやっと食事となる。
もっとも内容が内容なので栄養が取れるとも思えないが…。

食事を終えると“学科”と称して教室のような所でヤランネン主義を頭に叩き込まれる。
テキストはヤランネンの著書『我が純潔』、『ヤランネン語録』、『民族党宣言』など…もはや洗脳の域である。
 矯正の目的を達するための教育はそれだけではなかった。

 セクロス人の偉大さを示すため
「ローマ帝国軍と勇敢に戦った祖先の話」
「大航海時代より前にはるか遠くの海に漕ぎ出した祖先の話」

 など、アレクセンの知識では伝説なのか史実なのかよくわからない話も叩き込まれた。

 また、古今東西の、家族の大切さを示すような映像を見る学科もあった。
 映像を見るのはちょっと息抜きだが、一応あとで感想文を書かされるので適当に見ているわけにはいかない。

 そんな教育がしばらく続いた後、個別指導の順番がアレクセンに回ってきた。
 呼ばれて、彼は教官の部屋に入った。

「アレクセン スフェベンソンです。入ります」
「入りなさい」

 両側の本棚に一杯の本がある部屋だった。
 教官は、例の一神教の聖職者の服装で、それを象徴するペンダントをかけて、座っていた。

「君の母親について、教えてもらおうか」

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