美少女戦士 ピュアハート 27
思ったが何とかな…凄まじい攻撃だが、そっくり返してやるよお嬢ちゃん!」
ピュアハートのパンチで地面に叩きつけられたはずの金鬼はそのまま立ちあがり、一目散にピュアハートの前に駆け出した。
胸を撃ち抜かれたはずのその姿は…何故か真純と同じピュアハートに変わり、弱点には変わりないのか胸の中央に穴を開けたまま、拳を振り翳す。
「くらえっ!金鬼術!鏡写しっ!」
ピュアハートの目の前に迫った金鬼の姿はまさに鏡写し、といったところだった。
鏡のダウナーであった金鬼の得意技は反射と姿を真似ること…さすがに金の相克である火には弱いが、ダウナーよりも上位の存在である、レイニーキングダムの住人と化した金鬼に耐えられない技ではなかった。
「ふははははっ!これで貴様との実力は互角だ!さあ!我が拳を喰らうがいいっ‼貴様と全く同じ実力を見せてやるっ‼うおおおおっ‼」
写し取った姿がまるで鏡像のようになるためか、ピュアハートの姿形を真似る…いや、完全にコピーした銀鬼は鏡像のように左手に持った手裏剣を数枚持ち、一気に爆風をたてながらピュアハートに詰め寄りコピーした攻撃を放つ。
金鬼もハンゾウにより事前に確認されていた攻撃、ミラクルハートエクスプロージョン…その威力を同等に持ち、金気のエネルギーを含んだ光輝く攻撃が拳より放たれた。
「ミラーエクスプロージョンッッ‼」
腰の捻りを加えた正拳突きのようなそれは、爆散する手裏剣の破片や塵埃を巻き込み、超音波振動の刃となってピュアハートをズタズタに切り裂こうとする。
もちろんそんなものを放てば辺りもただではすまない、あちこちの瓦礫がくだけ落ち、辺りに散らばり…まるで爆撃を食らったかのように轟音を立ててビルはボロボロと崩れ始めた。
「やったか!?」
金鬼もあまりの威力と轟音に驚きを隠せぬまま、急ぎ足でピュアハートがいた辺りに駆けつけた、ピュアハートの死体の回収を行わなければいけないし、それより何よりもきちんとピュアハートに止めをさせたかが重要になってくる、金鬼自体先ほどの戦いで思いきり腹部に穴を開けられたからにはすぐさま治療をしなければいけないのだが、もはやそう言っている場合ではない、ハンゾウのためなら命も投げ出すし、何より今ハンゾウの危うい立場を考えれば、ピュアハートの殺害と死体を手に入れることは一大事だ…だから何で産む度にパワーアップするとか設定考えたんだよ、余計不利になるじゃねえかデコスケ野郎なんて言ってはいけない。
「その辺にしておけ金鬼、俺がその場に攻撃を仕掛ける、近づいては元も子もなくなるぞ?」
中空から羽を生やした風鬼が金鬼にそう語りかける、風鬼の攻撃は木気、そして離れたところで怪しげな武器を構える水鬼は水気…ピュアソウルと共に行動していることを考えて合体攻撃を仕掛けるため金鬼を下がらせようと考えるが、痛みに耐える金鬼にはその考えは思い付かなかった。
ふいに、金鬼の耳には爆音でいささか遠くなっていたはずの聴覚が戻り、奇妙な音が聞こえていることを感じた。
「おのれ…まだ生きているのか?」
拳を構えながら金鬼は警戒する、近距離パワー型の肉体はよほどの事がなければ攻撃を食らわないはずだ…そう、よほどの事がなければ。
そして、その奇妙な音がどこか空気を裂くような…サイレンのような音だと気づいた時、金鬼の身体に衝撃が走った。
「エクスプロージョンッッキィーッックッ‼」
上空から突如として現れたピュアハートは遥か上空から空を切り、頭上目掛け思いきり踏み潰すように、炎を纏った蹴りを金鬼に食らわせた。
ドジュウウウウッ!という音が響くと同時に、落下エネルギーを合わせたキックを食らった金鬼はそのままドロドロにとろけて崩れ落ち、そして地面には巨大なピュアハートの紋章が広がっていた。
かつて金鬼もダウナーに吸収された人間がいたのか、とうの昔に肉体は完全にダウナーに取り込まれていたのだろうか、強烈な熱にも溶けずに現れた骸骨を踏みつけながらも、そのまま拳を構えるピュアハートにもはや死角はない…真正面に構え距離を取り、遠距離からの攻撃を仕掛けようとする水鬼すらその気迫に足がすくむほどだった。
「ちぃっ…南無三っ!許せ金鬼っ!爆流波っ!」
しかし彼らはそれ以上に上級ダウナーとしての誇りがあった、主君であるハンゾウの作戦を成功させたいという意志があった。
そのためにピュアハートを仕留めなければ意味がない…そう考えた水鬼は自らの武器…傍目には火竜出水に似た、しかしサイズは巨大なそれについた引き金を引き、一気に銃口に当たる部分から急激に水流を吐き出させていく…水鬼の能力は言うまでもなく水だがその強力過ぎるパワーは辺り一面に水を撒き散らし…それこそ都市ひとつを水害で洗い流すほどの水が吐き出せるが、いくらなんでもそれはオーバキルというものだ。