美少女戦士 ピュアハート 21
「それよりも今はマスミだニャ!早く助けるニャ!」
「…今は抑えましょう、それにこの波動…多分このダウナーが産まれたら軽く町が吹き飛びます」
ソウルを制止しながらも冷静にレインは答えた。
目の前で巨大な蛇皮 のようなものに飲み込まれかけているハートの腹部から出ている妖力は凄まじく…三人がフルパワーで戦っても勝ち目は薄いと判断していたからだ。
「今このまま苗床にされたハートを放置するのは危険すぎるわ、今すぐあの皮を…っっ!!?」
拳に力を込めていたソウルの肩が揺れ、吹き飛ばされる、あまりの出来事に瞬時に傘を広げ、ソウルとハートを守ろうとしたレインは背後を振り向き…そして驚きの声を上げた。
「アンタは…チヨメっ!まさか、まだ生きてたのね!!」
「あらあら、あのリーフとか言う小物の妹ちゃんじゃない…ふふ、私はあんたに用はないのよ?あるのはそこの…ピュアハートだけよ?」
「渡さないわ!ピュアカルテットの仇は私が取る!お姉ちゃんや…弥生さんのために!」
因縁めいた空気が流れ、自身の持てる力を限界まで使い、一撃を決めようとした瞬間、先に行動を起こしたのは…ピュアハートだった。
皮を自ら引き抜き、立ち上がり…しかしその目はまるで蛇の目か何かのように輝き、真純…ピュアハートは立ち上がった瞬間に背後からレインを殴り飛ばした。
「ぐっ!…うぅっ…」
肉壁にぶつかり衝撃音と共にもんどりうったレインは弾き飛ばされるが、衝撃を受け身でも逃しきれず、脳震盪を起こし、意識を失いかけ身体を震わせながら…それでもなんとか、絞り出すかのように声を出した。
「ど…して…ハート?…」
「殺す…みんな殺す!…お前も殺してやるっ!」
まだ会って間もない間柄ながらも、レインはその震えるような声から発する言葉に全てを察した。
ハートは憎しみに飲まれている…このままでは何をしでかすのか解ったものではない、と。
「あらあら、お目覚めみたいねぇ…ピュアハート…貴女には用があるのよ?さ、来てもらいましょうか?」
「コロス…コロス…」
チヨメは笑顔を浮かべてハートに話しかけるが、ハートからすればそんな事は知ったことではない。
「止めるニャマスミ!皆を守るニャ!戦士は死んでも戦い続けるニャ!!他の皆はどうするニャ!」
「……うるさい!」
マスミは怒りにまかせ声を上げた。
目の前の猫のような生き物は所詮自分を利用し、自分たちを守るために人を殺させるまで放置した外道だ…純潔を笑い物にし踏みにじった生き物…それこそ畜生だ、許せるはずなど初めからある訳がない。
「ギニャアアアアアアアアッ!!」
ハートがサスケの頭を掴んだ瞬間、手からは黒煙が上がる。
ハートの手は文字通り燃え上がり、真っ黒な炎が手を包み、一瞬にしてサスケを焼き殺し…後には灰しか残らなかった。
「すごい悲しみと憎しみのエネルギーねぇ…でもそろそろ終わりにしましょうか?産まれなさい、コタロウ…また、一緒に楽しみましょう?」
「な、何をっ…おぉっ?!!んぐうぅっ、ふうぅっ!?んぐっ、はぁっ…はぁっ…」
ハートの攻撃的な…もはや殺気の固まりとなったような視線や振る舞いにも動じない、チヨメの言葉にハートは膝を崩して苦しみ始めた。
「ふふ…産まれるのね…さ、おいでコタロウ?…共に世界を作り直しましょう?あらゆる人間に絶望を…ユートピアムをレイニーキングダムの悲しみの雨で埋め尽くすのよ?」
「ふぎいぃぃ〜〜〜っ、ふおぉっ、ん゛おぉぉぉ〜〜〜っっっっ!??!」
悲痛な悲鳴を上げるハートの声が地下室に響きわたり、そして羊水や尿、大便をまき散らし、獣のように四つん這いになりながら…ピュアハートは出産した。
ずるりと生まれ落ちた赤ん坊はすぐさまに立ち上がり、崩れ落ち気絶したハートの上に乗り、ジュルジュルジュパジュパコリコリレロレロと母乳を吸い出すうちに、自らへその緒を引きちぎり、胎盤を食らい…いつの間にか三歳時程度に成長していた。
「んふっ…流石コタロウねぇ…相変わらず凄まじい成長ぶりだわ…さ、こっちに来なさい…ああ、餌は食い殺しても構わないわ」