僕が原間瀬泰蔵 15
「うっさいわね豚男!」
「あ、あ、ブヒ、ごめんなさい。」
まだこのブヒと反応する癖は抜けないみたいだ。
「あ〜もうめんどくさい。次のチカラはコレよ。頭に別のスイッチを想像しなさい。」
「へ?……」
「はい、そのまま切り替えて〜!」
「………?…手が…手が透けていく!ひ、ひぃ!」
手だけじゃない!足も…腕まで、まさか!
「飛べない豚男でも、消えれば上等よね。」
「そうかしら?」
「豚は豚でしょ。」
好き勝手に言われてる僕ですが、なんと透明人間になってしまいました。
手鏡を取って、自分の姿を映してみると・・・。
本当に、何も見えない。右手に持った手鏡に左手を映してみる。
流石は神の力、ガラス板などだと見えるような輪郭線などさえもみえない。
「むぐー。」
あまりのことに素直に唸ってしまう。でもこれだけ見えないと、外ではいきなり車に撥ねられそうで危ないな。
そしてスイッチを頭の中で戻してみる。
ぼわぁ・・・・・
僕の体は元通り、眼に見えるようになった。
そんな僕に女神様達のご託宣が続く。
「まあ、そんなものよ。」
「今回のノルマはその沙織って娘1人だけだから。
ちなみに期間は1か月ね。わかった豚男?」
「ブ・・いえ、はい、解りました。」
思わずブヒと答えそうになるのをこらえて僕は返事をした。
「じゃ、1月後まで。まったね〜♪」
そう言うと女神様達は唐突に姿を消した。
さて、行かないと。時間だ。
急ぎ空手道場に向かう。
先月から始めた空手で、まだまだ基本的なことしか教わってないが少しずつ身が引き締まってきた。
いずれは強くなって・・やるぞー!!
僕は3時間ほど空手の稽古を受けて帰ってきたところで、沙織に一度会いたいから来てくれとメールした。
それから、1週間後の日曜日。
僕は学校が休みで体の空いた沙織と久しぶりに再会した。
「泰兄さん、久しぶりだね。」
「うん。沙織、久しぶり。益蔵兄さんは元気してたかい?」
「ふふーん。その様子だとまだ泰兄さんは知らないのね。益兄さん、今度は艦隊勤務だって。それもイージス艦だって。」
「艦隊勤務になったって、僕には教えてくれなかったぞ?!」
「ごめん泰兄さん。伝えるように言われてたんだけどぉ・・・。」
「じゃなぜ伝えてくれないの?」
「驚く顔が見たくてわざと伝えなかったの。てへ。」
可愛く舌を出す沙織。
昔から沙織にはこういう茶目っ気を出す癖がある。
普通の女の子がやると相手を怒らせそうな茶目っ気でも沙織の場合見た目の可愛さと天真爛漫な性格で周りから許されている感じだ。
ちなみに僕には益蔵という兄がいる。僕よりはるかに優秀だし、顔もいいし防衛大学を出て自衛海軍の士官になった、自慢の兄だ。
さて、いよいよだ。自慢の妹を抱くとしよう。
脳内スイッチ・・・発現・・・・・起動シークェンス・・・OK、作動!