僕の彼女 19
翼さんがそう告げると、エリカちゃんは不満そうな顔をする。
「えー、それって…なんかつまんないなぁ…」
「ごめんね、海の為にもさ」
ガッカリ肩を落とすエリカちゃんを麻衣子が励まそうとする。
ここまで落ち込むのを見ると悪い気も起きてしまう…
いっそのこと、エリカさんには本当のことを言ってもいいんじゃないかとも思うけど、そうなると問題は白坂さんだ…
男が一緒に来るなんて、ちょっと想定外だったもんな…
まあ白坂さんって気弱そうな人だから、こっちのペースに巻き込むのは簡単かもしれないけどな…
オフでも運転を担当してくれてるし、同行という形でグラドルという商品を守ろうという意思もある。
こういう裏方の人の力量もないと、麻衣子が清純派として活躍し続けるのも難しいだろう。
当初は仲居さんや他のスタッフが週刊誌と繋がっていないか警戒していたけど、実際僕は翼さんにフォローしてもらってる立場だ。
「こっちではメイちゃんにはのびのびさせてあげて。念のため、メイちゃんとのエッチは禁止ね」
「そんなつもりで、着いてきたわけでは…」
「君が旅先だろうと溜まるのは知ってるけど、私が抜いてあげるから。安心して」
「時間があればってことで…」
翼さんがそれとなく耳元で囁いてきたので、それとなくかわす。男とバレなくても、エリカちゃんに麻衣子と密な接触をしてるのを見られてはまずい。
一応、翼さんと僕は『学生時代の仲の良い先輩後輩』と言う事になっている。
勿論、麻衣子と翼さんも先輩後輩で、それが縁で麻衣子もグラドルになったから、他人から見ても不信感は持たれないだろう。
ただ、学生時代を詳細に調べられると心配なのだが・・・
「海ちゃん、お土産選ぶのに付き合ってくれる?・・・白坂くん、メイちゃんとエリカちゃんをよろしくね」
「はい、翼さんあんまり羽目外さないでくださいよぉ・・・」
少し情けない声を出す白坂さんにちょっと悪いけど笑ってしまう。
そして可哀想だからフォローしておく。
「白坂さん、翼さんはちゃんと『監視』しておくのでご安心を」
「流石、海ちゃん、助かりますよぉ」
「二人共っ!、私だって自制心ってものがあるんだからねっ!!」
僕と白坂さんの会話に翼さんが食ってかかってくるけど、麻衣子とエリカちゃんが『ないない』なんてジェスチャー付きで笑っている。
まぁ、こう言う所はある意味小さいながらアットホームな事務所だと思う。
「大丈夫ですかね?…あの二人に気づかれてはいませんよね?…」
秘密を共用している翼さんと二人っきりになるとやっぱり聞いてしまう…
「うん、今のところは平気だと思うよ…海斗くん女の子にしか見えないもの…」
「あっどうも…、でもそれは嬉しいんですけど、やっぱり騙しているみたいで申し訳なくて…せめてエリカちゃんだけにでも本当のこと言っちゃダメですかね?…」
「ダメダメぇ〜エリカちゃんって悪い子じゃないんだけど…口の軽さは天下一品なのよ;…」