声のお仕事なんですが。 26
この状況だから不可抗力だろう。
しかも前にいるのがセクシーな格好でナイスバディの持ち主の舞だから当たる部分…股間が大変なことになっていることだろう。
「これ快速だし、舞って私と同じ駅で降りるでしょ、もうちょっとの我慢よ」
「はい…」
…彼の方も望んでこうなったわけじゃない、勘違いのお詫びで家に誘ってもいいかな…
やっと目的の駅に到着…
「すいません!」と、迷惑がる人を掻き分け扉に向かう…
もちろん私は彼の手を掴み、引っ張るようにして一緒にホームに出た…
「す、すみません!;…僕、別にヘンなことしようとした訳では決して無く;…」
泣きべそをかく彼は、しっかりと股間を押さえ頭を下げる…
「大丈夫。君を責めるつもりなんかないわ。あんな状況だったし、触っちゃうのも当然よね」
「すいません…」
何度も何度も頭を下げる彼を、私と舞で宥める。
多くの人が行きかう改札を通り過ぎ、私の住むマンションの方へ歩き出す。
「無理やり来させちゃったみたいでこっちこそごめん」
「いえ、僕もこの近所なので」
「あら、そうなの?」
まだ股間を気にするように歩く。
舞のお尻に股間が、胸にも手が当たっちゃっていたようだから、仕方のないことか。
「時間、あるかな」
「えっ!?……ま、まあ」
「これも何かの縁じゃない?…せっかく出会ったんだし、ちょっと家でお茶でもどう?…」
「そ、それゃあ嬉しいですけど、突然お邪魔していいんですか?…」
「遠慮はいらないは…こっちは寂しい一人暮しだもの…、舞も来るでしょ?…」
「えっ、私もいいんですか?…」
「何言ってるの…、彼だって私と二人っきりだと構えちゃうはよ…」
彼は舞の方をちらっと見やった後、また俯いてしまう。
舞はちょっと困った顔ながらも、気丈に微笑んで見せた。
「リコさんがそう言ってくれるなら、お供しますよ」
「そのほうが心強いわ」
彼が詫びたいのは舞の方だし、勘違いだってわかってるからそんな厳しいことも言わないし、それだけで別れるのも嫌かなと思った。
もしかしたら…ね。
私の部屋に2人を招く。
「お邪魔します。リコさんのお家、初めてですね」