声のお仕事なんですが。 19
逞しい筋肉ばかりに目を取られていたけど、顔もなかなかにイケている…
まるでダンスボーカルグループのダンサーにいそうだはね…
匂い立ってきそうな彼の若さを前に、ちょっと何かを期待してしまう…
私はゴーグルを外し、“なにか?”…という風に彼に向かい首を傾げて見せる。
「あっ、やっぱりそうだ」
何か嬉しそうな表情をして彼はニコリと微笑む。
何がそうだ、なんだと思いながら怪訝そうな顔をする美羽ちゃん。
「あの、お二人って、声優の…」
「そこまで」
人差し指で彼の口元を押さえる。
「話は人のいないところで、ね」
プールもガラガラだけど、より見えない場所のほうがいい。
女子シャワー室…彼も関係者だからいいだろ、別に。
「やっぱり他の人にバレたらまずいですかね?…」
彼はどこか楽しそうに言う…
自分だけが私たちのことを気づいたことが嬉しいのかもしれない…
「よかったぁ気づいたのが君みたいな子で、ストーカーみたいな人だったら怖いものぉ〜」
アニメ声を作り、彼の腕に身体を擦り寄せる…
「うわー、ミリアちゃんの声…」
「ふふふ、知っててくれて嬉しいな」
「お二人とも今度の作品…」
「ええ、水泳部のお話でね」
シャワー室に明かりが灯る。
誰もいない。
一番奥のカーテンを開け3人で中へ。そこで彼は待ちきれない気持ちを爆発させ、美羽ちゃんの胸を思い切り掴み、抱きつく。
「やだぁあ、君ってそういう子だったの?…」
ちょっと呆れながら、私は監視員くんを美羽ちゃんから引き離す…
「あっ、すみません;…僕、ミリアちゃんの大ファンなもんで…つい;…」
確かにミリアちゃんはそういうキャラだけど、美羽ちゃんを一緒に考えてもらっちゃ困るはよね;…