Infinity〜若社長とグラドルたちの日常 21
しばらくして。
撮影が終わったようだ。
カメラマンや機材スタッフが現場を離れていく。
あんりは黄色のパーカーとデニムのショートパンツを身に着けると、賢太郎の姿を確認し、一目散に駆け寄ってくる。
「お疲れ様」
「賢さん、どうでした?」
「すごく可愛く撮れてるんじゃないかな?」
「ですかねー?」
首を傾げるあんりだが、その顔は満足そうな笑顔だった。
パーカーを着てはいるものの、あんりの豊かな胸は服の上からでもチラチラと見える。
「(ちょっと刺激が強いかな…)」
スタッフは皆宿泊するホテルへと引き揚げる。
「僕らも戻ろうか」
「はい♪」
ホテルの部屋に戻る。
当初、あんりと賢太郎は一人ずつ別々の個室で宿泊する予定だった。
しかし、あんりの希望で二人部屋を用意するよう変更されたのだ。
「どうしてまた…」
「賢さんと一緒がいいんです♪」
笑顔でそう言うあんりに対して、断るわけには行かなかった賢太郎だった。
さて。
夕食の時間にはまだ早く、暇がある。
「ねえ、賢さん」
「なんだい?」
「プール、行きませんか?」
「ああ、あれか」
今、二人が宿泊しているホテルには屋外プールがある。
撮影以前からあんりが
「プールで泳ぎたいですね〜」
と言っていたことから
「暇があればいいね」
「賢さんも一緒に泳ぎましょう!」
と話していたのだ。
「賢さんも持って来てますよね?水着」
「ああ、あんりちゃんに言われたんだから、もちろん」
「よ〜し、行きましょう!」
長丁場の撮影を終えたばかりというのに、あんりのテンションは高い。
「(たまにはゆっくり羽を伸ばすかな)」
賢太郎も仕事とバカンスを兼ねての海外なので満更でもなかったりする。
部屋から少し歩くと、ホテル内のプールに着く。
「広いね」
「ふふ、しかも貸切ですよ〜」
もともと宿泊客の少ないときではあったが、プールには二人以外誰もいなかった。
「ここで撮影はしないのかな」
「明日やるかもしれないです」
「へぇ」
「プライベートで楽しむなら今ですよ!」
そう言うと、あんりはパーカーを脱ぎ捨て、水着姿になる。
下の水着―撮影でも着けていた純白のビキニである。
「あれ?それ、撮影用の奴じゃ」
「そうです」
「明日の撮影は?」
「別の水着がありますよ♪」
「あー、そうなんだ…」
水着になるや、プールに飛び込むあんり。
「(元気だなぁ)」
賢太郎はそんな彼女を見ていて感心する。
「賢さん!一緒に泳ぎましょうよ!」
プールの中からあんりが呼びかける。
「そうくるよなぁ」
賢太郎も予め、海パンを履いていたのだ。
「(たまには遊ぶのも必要だね)」
賢太郎もプールに飛び込む。
「そー、賢さんもたまにはパーッと弾けないと!」
これまでは『社長業』に専念していたせいか、おとなしく、堅い性格を通してきた賢太郎。
しかし、素は普通の青年なのである。
19歳、本当は遊びたい年頃なのだから。
「いやー、こういうときしか楽しめないなー」
「賢さん、もっと遊んでたっていいんですよ?」
あんりが賢太郎に近づく。
「いや、僕は、だってインフィニティの社長なわけだし」
「確かにそうですけど、仕事にこだわるよりも、私は今みたいな賢さんが好きですよ」
「そう、かな」
「そうです!」
あんりは満面の笑顔で答える。
「それー!!」
しんみりした空気から一転、あんりが思い切り水を賢太郎にかける。
「わ、あんりちゃん、それは反則だろー?」
「賢さんの素を出すまでですよーだ!」
「社長に歯向かうとはいい度胸ですねえ?」
「そこで社長使わない!」
今の二人は、事務所社長と所属アイドルではなく、友達もしくは恋人同士に見えるのだ。