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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部 88

啓太としては久しぶりの大学だが、周囲の人間にはそうではない。
啓太がいない間、変身能力を持つ怪人が影武者として行動していたのである。
もっとも啓太には親しい友人など怪人のほかにはいないので、影武者などいなくても問題なかったかもしれないが。
久しぶりの大学、久しぶりの講義に啓太は以前は感じなかった、不思議な感覚を覚えていた。
退屈?安堵?楽しさ?むなしさ?歓喜?失望?優越感?
どれも今の啓太の気持ちに当てはまるようで、それでいて違うような、複雑な心境。
それは組織の長としての道を歩み始めたが故の、違和感だったのかもしれない。
人間でありたいと思いながら、人間じゃない部分にいつの間にか片足を突っ込んでいたことに戸惑いつつも、啓太は黙って教授の講義に耳を傾け、シャープペンを走らせていた。

――――

「―――なんですって?
 啓太様の動向を調べている怪しい男がいる?」

その頃。啓太と別行動を取っていたエレメンタル3人娘たち一行は、警備ポイントで啓太不在の間の情報を聞き出していた。
その中でもっとも彼女たちの関心を引いたもの。
それはここ最近、ずっと大学でうろついているある不審人物についての情報だった。

「ああ。オレも何回かそいつに会っていろいろ質問されたんだが。
 ありゃあ、かなりヤバい部類の人間だな。
 何つーか、何かに取りつかれているような・・・そんな感じのヤツだった」
「つまるところ復讐・・・ということですか」

直純の言わんとしていることを理解したマリアは、その怜悧な表情を崩すことなくそう答えた。
マイとマヤも口にこそしないが、その顔は間違いなく戦士のそれだった。
復讐。それは今まで啓太が戦ってきた組織の残党。
啓太自身は鈴や空の仲間を救うためだったり、自衛のためだったりと理由こそさまざまだが、どれも逆恨みされるようなものはない。
しかしそれは勝ったものの言い分に過ぎない。
やられた側からすれば、自分たちは向こうの勝手な言い分のために全てを奪われた被害者であり、啓太たちは憎んでも憎みきれない仇なのだ。
それは啓太が夢たちと一緒に生きることを選択した時点で避けられない存在であった。
だからこそ夢やクロックたちは、復讐者の存在を警戒してきた。
戦力の増強に努め、捕虜となった怪人は味方として取り込み。
組織の長である啓太の正体を隠し、知られる可能性のある場所には怪人を配置し、網を張っている。
それほどまでに復讐者とは警戒すべきものなのだ。

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