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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部 20


名前で呼ばなかったことに、今度はルシフェルの表情が変わった。
うすうすはわかっていた。
お世辞にも仲のよくないこの男が、ここに来る理由など1つしかない。

「いいかげん、上の手を煩わせるのはやめろ。
 命が惜しいのなら、な―――」

その言葉を聞いて、ルシフェルがうんざりしたような顔になる。
そう来るとわかっているのに、なぜこうも嫌な気分になるのだろう?
ルシフェルは嫌悪感を隠そうともせず、ふとそんなことを考えた。
実は彼女、この手の脅迫を受けたのはこれが初めてではない。
それどころか、自分を疎む連中に襲われたことさえある。
このルシフェルという少女、立場上ヒーロー協会に属しているが、その性格は傲岸不遜、天上天下唯我独尊。
他人の言葉に惑わさず、我が道をどこまでも突き進んでいくタイプだ。
そんな彼女が周囲に敵を作らないはずはない。
行く先々で問題を引き起こしていた。
だからルシフェルは慣れた様子で、いつもどおりのセリフを口にする。

「やれるものならやってみろ。
 何ならここで今すぐ始めてやってもいいんだぞ―――?」

あからさまな宣戦布告に、再び空気が緊張・・・否、凍りつく。
もしこの場に誰かがいれば、きっと陸に打ち上げられた魚のように苦しんでいたことだろう。
逃げるどころか、呼吸すらまともにできずに。
そんな危うい空気の中、ルシフェルは臨戦態勢のまま、突然笑みを浮かべた。

「しかしずいぶんとおもしろい男だな、貴様は。
 忠義も何もないくせに、上のために私を殺す、なんてな」
「―――何の、話だ?」
「とぼけるな。ごまかせると思っているのか?
 おまえはお上に忠実な犬を演じているが、本質はそうじゃない。
 だからかな?私にそんな敵意を向けてくるのは。
 そんなに私がうらやましいか?ねたましいか?」

探りともあざけりともつかない、ルシフェルの言葉。
自殺志願としかいいようのないこの行為に、翔影の殺気が一気に膨れ上がった!

(来るか―――?)

キンッ・・・。

しかし次の瞬間、今にも斬りかかりそうだった殺気は陽炎のごとく消えていく。
あまりの拍子抜けに、さしものルシフェルもあっけに取られていると、翔影は無言でその場を後にした。
もう話すことは何もないと言わんばかりに。

(アイツめ、あれだけの殺気を放っておきながらあっさり引くだと?
 一体何を考えて・・・)

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