普通の高校に女子限定クラスができた理由 104
この宿泊研修では、夕食後は混雑を避けるため男子風呂、女子風呂ともクラスごとに使う時間が決まっていた。しかし、8組は女子だけなので、8組の入浴時間は一番最後、二つの風呂を使えるようになっていた。
雅人は7組の男子入浴時間が終わる頃、男子風呂の点検に来た。
「そろそろ入浴時間終わりだぞ」
雅人は目に付く扉を端から開けていく。
「あ!奥村先生!」
「掃除用具入れなんかに隠れて、見つからないと思ったか」
雅人は掃除用具入れの中に隠れていた男子生徒を1人つまみ出し、引き摺り出した。
「まったく、何をしていたのか」
男子生徒は7組の生徒の1人だった。
黙る男子生徒に雅人はやれやれといった気分で話しかける。
「どうせ、8組の子たちの様子をのぞいてみようとでも思ったんだろう」
「はい、すいません」
彼は早口にそう言うとそそくさと出ていった。
そして雅人は、もう誰も潜んでいないだろう、と確信できるまで点検して、最後に「男子風呂」の表示を外そうとした。
「君、それは外す必要はない」
「教頭」
偶然、なのか、その場に教頭が通りかかった。雅人から見て、本来この旅行に関係ないのではないか、と思う男性教師の一人だった。
「あの、これから8組の女子がここに入るので、この表示はとった方がいいと思ったのです」
教頭は雅人の言葉に頷き、少し考えてから言う。
「この施設に風呂はひとつしかないから、彼女たちもわかるだろう」
「ですが…」
「もう男子が入らないわけではないのだからね」
教頭はにこやかにそう言った。
「まだ我々は入っていないからな」
雅人は、そのように言われては、何か言っても無意味であることは理解していた。雅人は一礼してその場を離れた。
"被害を少なくできないか"
彼は考えたが情報を目立たないように速く伝えることが難しい。彼はまず泉に連絡しようとした。