普通の高校に女子限定クラスができた理由 105
「今から入られるんですか」
「そうだね」
雅人は教頭に尋ねると、彼は頷いた。後に続いて2人年配の男性教師がやってきて中に入っていく。
雅人はいったん浴室の前から離れた。
少し歩くと、泉と、合宿に同伴している養護教諭の内田紗理奈の姿が見えた。
紗理奈は泉と同級生で、仲が良い。
「あの、沼尻先生、ちょっと」
雅人は泉にそっとさっきのことを相談しようとした。
「あの、もし、8組のことでしたら、内田先生もご存知なのでそのままおっしゃっていただいて大丈夫です」
「はい」
雅人はさっき見たことを二人に告げた。
「教頭先生と、引率の先生が今、浴室に入っていきました」
「えっ」
「そう、ですか」
雅人の報告に、表情を曇らせる泉と紗理奈。
「ですから、今のところ来てはいないようなのでいいんですが、8組の生徒の子たちにはなるべく近づかないようにと…」
「ええ、そうですね…」
「…でも、今からだとみんなに伝わるには間に合わない」
泉は頭を抱える。
「通路に立って伝えたら…私立ってましょうか?」
「ありがとうございます、内田先生…でも、誰も行かなかったら、あの人たちきっとイライラする…私、入ってきます」
「無理しないでね、もし必要なら私も…」
「大丈夫です。ありがとうございます…」
泉は1人浴室に向かっていく。
雅人は紗理奈とともにその背中を心配そうに眺めていた。
「沼尻先生、どうして自分1人だけ犠牲に…」
「彼女は自分のクラスの子達を守りたいのでしょうが、それにしたって…」