ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 980
僕の言葉に黙って頷く桐山さんと、納得した様子の香澄。
「なら、雇って正解だったんですね」
「ありがとうな、香澄」
それを聞いて桐山さんも笑顔になる。
僕は大学から東京に行ってしまったからあの時の同級生のその後は全然わからなかった。
一番の友達である岩田宏…遥さんの弟だ…だって女子の情報を知り得ていたわけではないのだし。
まあ広とも久しく会ってないし、高校時代の友達とは全くと言っていいほど音信不通だ。
「桐山さんは、皆とは連絡取ってるのぉ?…」
懐かしい高校時代の面々の顔が蘇る…
「そうね、私はずっと地元にいるから…」
確か桐山さんは大学も東京には行かず、こっちの大学に進学したんだっけか…
女子ではそういう子が多かったと以前聞いた気がする。
弥生さんと付き合っていた僕は同級生女子に興味がなかったと言っても間違いじゃないから、興味がなくて聞き流していたかもね。
「でも、桐山さんがなんでここで」
「仕事辞めて、ね…当てもなくて、ダメもとでね」
「あらぁまたそれはご謙遜だはぁ、桐山さんは児童教育においては日本でも注目されている青空保育園で働いておいでになったんですよぉ…」
ああ桐山さんは保育園の先生だったのか…
「そう言っても私は無我夢中で働いていただけ…偉いのは園長先生であって、私じゃないんですよ…」
香澄の言う注目される、というのもいいのだろうけど、そうするとそれ以上に激務なのが想像できる。
桐山さんは謙遜しているけど、むしろスカウトされてここにやってきたと考えてもいいのかな?
こちらの方が待遇もいいだろうしね。
「私はすごく助かってます。本当なら母親としてすべてやらなければならないんでしょうけど…」