ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 91
「香澄もお帰りなさい。心配しなくていいのよ〜、女の子はこのくらいやんちゃなほうがいいんだからぁ」
涼香さんとやら、香澄ちゃんを抱きしめ頭を優しく撫でる。
それを優しい顔で見つめる杏さん。
涼香さんは僕のほうを見て、またニコリと微笑む。
「想像したとおりのいい男の子ねぇ」
「でしょう?」
…お二人、何を
「香澄の母の、青山涼香です」
「え、お、お母様?」
「はい」
「え、あ、あの、お姉さんとかじゃなくて…」
「いやだぁ〜そんなぁ、嬉しいわぁ〜」
…ええっ!?
マジに驚愕する僕の身体を包み込むように抱擁してくる涼香さん…
これってハグって言うんですよね?…
日本人でこんな挨拶をする人、初めて会いましたよ…
「緊張していますのね…洋服越しに貴方の心臓の高鳴りが伝わってきますよ…」
はい…脇汗が出る程に、目茶苦茶緊張していますよ…
涼香さんが僕のところを離れ、再び面と向き合う格好になる。
「この度は、香澄のこと、ありがとうございました」
「あ、いえ、とんでもないです」
「些細なことで喧嘩して、家を飛び出てしまって、心配になってしまって」
「そうでしたか…」
涼香さんの後ろで香澄ちゃんがばつが悪そうに俯く。
「僕のほうこそ心配だったんです。香澄ちゃんが家出して、ご両親が怒ってるんじゃないかって」
「いえ、そんなことより、喧嘩したのは私たちが悪かったんです。主人も後悔してました」
「そうでしたか…やはりお見合いのことで?…」
「ええ…香澄にはまだ早いのは重々分かってはいたんですが…お相手がかの竜崎家の御子息でしたもので、つい主人も私も盛り上がってしまいまして…」
…かの竜崎家って言うぐらいですから、この青山家さんよりも凄いお家柄なんでしょうか?…
「それで、主人も私も考え直したところだったんです。香澄が本当に好きな人を選んだときを待とうって」
「…なるほど」
それにしては、香澄ちゃんが僕を選んだのは早すぎるような…
「匠さん、あなたについては、桜ちゃんからお話を伺っておりますわ」
桜ちゃん、お母様にも話したんですか!