ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 882
…僕はそういうプレイは希望していませんが、香澄さん。
初めて出会ってホテルで致したあの日、確かやたら可愛いって連呼していたのを思い出したよ。
「はい…綺麗になりましたよ」
「どうも…」
ニッコリ笑った香澄は我が子同然の扱いで僕を見る。
まあ香澄も母親になったことで心境の変化もあるのだろう…
男なんてどうしたって女には敵わないからな;…
「ありがとうございましたぁ…久しぶりに気持ちいい思いが出来ましたぁ…」
ペコッと頭を下げる香澄…やっぱ可愛い…
「何だよ活きなり;…それを言うなら僕の方こそ…今まで放っておいてゴメンよ…」
「いえ…私は今まで身重でしたし…匠さんを満足させることなんて出来なかったです。だから、この間は誰と何したって構わないって思ってました」
「いや…香澄…」
「匠さんも男ですもんね」
…まるで聖母のような笑顔で香澄が言う。
確かにそうだが、それだからって世間的には許されることじゃないだろう。
それでもそう言ってのける、香澄の懐の深さには感謝するほかない。
僕もこれからは少し控えなくちゃいけないよな…
まあここ一年ぐらいの間に、普通の生活をしている男の一生分以上に、いろんな女性と関係を持ってきた訳だし、もう後悔は無いよな…
「ああ、これからはこの子たちの為にも、いい父親にならなくちゃだよな…」
すやすや眠っている樹と香の頭をそっと撫でる…
「ふふっ、匠さんもすっかりパパの顔ですねぇ」
「香澄に比べたら遅すぎるだろ」
まだそんな自信すら湧かないよ。
「シャワー行ってきます。それまでこの子たちお願いしますね」
「ああ」
香澄はパタパタと部屋の奥の方に向かう。
…あの中にあるのか?そういやここの間取り全然知らないぞ。