ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 82
誰もいないことを確認し、僕は慌てて風呂場に駆け込む。
啓くんの前では気づかれぬように懸命に冷静を装ってはいたものの、心の中ではそれどころじゃ無かったのだ。
Gパンを下げると、案の定あの“栗の花の香り"が鼻孔を突いた…
僕はこの歳になったにも関わらずの夢精に、頭を抱えざるおえなかまった…
…なるべくその事実を隠したくて、急いで服を脱いでシャワーを浴びる。
これでどうなると言われそうだが、何もしないよりはマシだろう。
時間にして数分で終え、風呂場を出た。
「何してたんですか?」
「うん、ちょっとね」
…このことは香澄ちゃんには知られたくはない。
「香澄ちゃん、誰の部屋で寝てたの?」
「栞さんのお部屋です」
「あ、そうなの」
「また夜中までゲームしちゃいました」
…そうだったのかい。
昨日、お袋が栞がなかなか起きてこなかったとぼやいていたが…
「うむぅ?…何か臭いませぇん?」
…僕は慌てて手にしたトランクスを後ろに隠す。
…いくらなんでも、精液も真新しいこれを、洗濯機に突っ込んでおく訳にはいかないもんね。
「そ、そうか?親父のコロン使ったから、それでじゃないかな?…」
…僕は苦し紛れに、すぐにバレそうな言い訳をする。
「ふぅ〜ん。いい香りでぇすねぇ〜♪。私この香りぃ好きぃでぇすぅ〜♪」
…いや、それってどうなの?
ニコニコと笑う香澄ちゃんが、なんかちょっと怖い。
「匠さんは朝からお盛んですねぇ〜」
って、あっさりバレてますし。
「あ、あの〜…」
「もちろん誰にも言いませんよぉ。青山家秘伝の技術を使ってこの香りを消す方法をお教えしましょおかぁ?」
…は、はいぃ!?
「さあぁ、後ろに隠したパンツ、出してくぅだぁさぁいよぉ〜」
…やっぱり、臭いの元凶を出さなきゃいけない訳ですよね…
「さあぁ匠さぁん、今更恥ずかしがってる場合じゃないでぇしょぉ?…」
…君って、こういう事にはやけに積極的になるんですよね;…
「ほら、早くしないとお家の人たちが起きて来ちゃいますぅよぉ!」
…はい…妹たちには勿論…啓くんにだってこの歳になって夢精したなんて知られたくはありませんよ…