ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 808
葉月ちゃんはジョッキのビールを一口グイッと飲んだ後、僕をとろ〜んとした目つきで見つめる。
…普段の葉月ちゃんに見ない、ものすごく色っぽい視線に思わずドキッとしてしまう。
「葉月ちゃん、大丈夫?立てる?」
「大丈夫でしゅよ〜、これでも強い方なんでしゅから…」
本当かな?…もう呂律回っていませんけど;
会計を済ませて、足取りも不安な葉月ちゃんを連れて店を出る。
「ごめんなちゃい;…私から誘っておいて奢って頂いちゃってぇえ…」
こういうところはしっかりしているんだな。
「気にしなくていいよぉ。めちゃくちゃ安い店だったからね…」
この位なら、僕の安月給でも痛くはないからね。
「葉月ちゃん、ここから家は近いの?」
「電車で行けばぁ、すぐに着きますぅ」
…そう言っても、これだけ呂律が回らなくて、足取りも覚束ないと危ないよなぁ。
ちょうどタクシーが来たので、2人で乗って葉月ちゃんの家を目指すことにした。
「運転手しゃん……までお願いしまゆぅ」
まあホテル代よりは安く済むだろう。葉月ちゃんもちゃんと説明できたようだ。
…しばらくすると、葉月ちゃんが一人暮らしするマンションに無事到着した。
まあマンションと言っても、アパートに毛が生えたぐらいの住まいではあったけど、その方がなんだか安心する。
美玲ちゃん家みたいな高級マンションだったら、どうしようかとも思っちゃったもんね。
「狭い家でしゅけどぉ…上がっていって下しゃい…」
それゃここで帰ってしまったら、君は目と鼻の先にいながら自分の家までたどり着けないんじゃないのか;?…
僕が肩を貸してやらないとバランスも取れなくて危ない。
エレベーターもないし、階段で足を踏み外して転げ落ちたらそれこそ大変だ。
「匠しゃん、ありがとうございましゅ〜」
「ここでいいんだね?」
「はいぃ〜、狭いし〜散らかってるかもしれましぇんけど〜」
葉月ちゃんの身体を支えながらドアを開ける。