ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 740
顔や性格だけならまだしも、ここ最近の行動まで似ているとなると、双子はここまでシンクロするものなのかと思ってしまう。
…同時に、それが宿命なのだと。
「匠兄ぃ、晩御飯できるよ」
下の階から梓の声がする。
もう夕食の時間なんだ…僕はベッドから起き上がる。
開いたチャックを上げようと手を伸ばすと、ソコは僅かに反応の兆しをみせていた。
スケベなことを考えてた訳でも無いのに;…
もしかしたら巧が…そんなことをしてるのかもしれない?…
まさかな;
僕は眉をしかめながら、その膨らみを無理矢理にズボンの中にしまい、チャックを上げた。
1階に下りると、家族全員がリビングやキッチンに揃っていた。
もちろん栞も帰ってきている。
「遅かったな」
「うん、まあね」
その笑顔は吹っ切れたのか、清々しく見えた。
「ココまで自分で帰ってきたのか?」
「ううん、送ってもらってきた」
ゆかりさんにはお礼を言っておかないとな。
「悪いな置いていっちゃって…」
「ううん…仕方ないよ。」
事情をゆかりさんに聞いたんだろう…栞はそれ以上何も言わなかった…
「啓くんは…どうだった?…」
梓が心配気に聞いてくる。
横に座る恭介は神妙な面持ちだ…
「うん、2人が心配するほどじゃないから」
栞は笑って言う。
まあ僕も感じたのはそうだったけど。
「そっか、よかった…」
梓がため息を漏らす。
啓くんを裏切ってしまった後悔と安堵の入り混じるような表情だった。
「匠兄ぃ、ちょっと」
栞は僕の腕を引き廊下に出るよう促す。