ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 741
「ん?…どうした?…」
リビングを出た所で僕は首を傾げた。
「匠兄ぃにはちゃんと言っておいた方がいいと思って…」
はぁは〜ん、やっぱり啓くんとそういうことになっちゃったってことかよ;…
「分かってるよ…啓くんと栞がそうなるんじゃないかって…薄々感づいていたよ…」
「何言ってるのよ匠兄ぃは;…啓くんと私がそんな関係になる訳ないでしょ;…」
ホントにか?
あれだけ長い時間向こうの家にいたんだろう、その間何していたんだ。
「ホントに?」
「ホントだって!ちょっと胸貸してあげたくらい…でもそこまでにはならない…」
…胸貸したって、それがそういうことなんじゃないのかな。
「啓くんだって、新しい好きな人できたって…」
「あ、そうなのか?…」
まあ栞と寝たか寝なかったとはいうことは、この際どうでもいいか;…
「だから梓が恭介くんと結ばれなくても、梓と別れるのは時間の問題だったみたいね…」
そういうことか…
だから思っていたより元気だった訳か…
「啓くんはいいさ…それより栞、お前は大丈夫なのか?」
「私?見てのとおり。引きずってたら人生お終いだよ」
昔から姉妹の中では一番元気なヤツだった。
真ん中が故、奔放に育ったせいかもしれないが。
いつも葵のお下がりで自分には新品が回ってこないとお袋に噛み付いていたあの頃が懐かしい。
もっとも男関係までそうなるとは予想外だったが。
「でもね…やっぱりあの2人とはちょっと距離を置かなくちゃいけないと思うの…」
「どういうことさ?…」
「だって今朝みたいなことが今後起こらないとも限らないし…そんな私、強くないから…」
言葉を選びながら、ゆっくりとした口調で話す栞…
僕は何と言葉を掛けたらいいか分からなくなる…