ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 698
「花木さんのところは、この辺りの自治会長でもあってな、匠は東京に行ってたから知らないだろうが、この辺じゃ誰もが慕っているような人で、悪い噂なんてないんだ」
「そ、そうなのか…」
…学校どころか、地域の権利者でもあったのか。
「じゃあ、結構有名な…」
「青山ほどではないけどな」
それゃあ、徳川の時代から由緒ある家柄の青山家に敵わないのは当然だろう…
「まあ元を糾せば、花木家も随分とご立派な家柄だそうだがな…」
そんな由緒正しいご立派な花木家とやらが、梓の“デキちゃった結婚”を許してくれるのか…些か心配ではある…
「花木恭介は、そのご立派な実家から大学に通っているの?…」
「そうだな。ただ彼本人は早く親のところを離れて独り立ちしたいと思っているようだが、可愛い一人息子だからなぁ」
…うわ、なんだか面倒な家庭のような気がしてきたぞ。
梓は本当に大丈夫なのか?
「ただな、梓がな…」
「…?」
梓の名前が突然出てきてギクリとする。
親父は梓と花木恭介のことを何か知っているのか?…
「あ、梓がどうしたって言うんだよ?…」
「ああ…梓は随分と花木の家の人たちに気に入られているみたいなんだ…」
「へぇ?!…梓は花木家と親しく付き合っていたのかよ?…」
「まあ、もともとは彼のお姉さんが葵と仲が良くてだ…それで娘たちとも家族ぐるみの交流ができていったんだ」
佐織ちゃんのことだな…
確か葵は恭介とも付き合っていたんじゃ…
「彼は、梓のことが好きなのではと思っている…のは、俺の思い過ごしなのかと…」