ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 693
一息つくと、玄関からリビングへ移動する。
栞が皆に温かいココアを入れてくれていた…
「それで、その花木恭介って奴は何て言ってるんだ?…」
塾の教師をしているといえまだ所詮大学生、21やそこいらの男が、ちゃんと責任を取ってくれるか心配だった。
「私が妊娠した、って言ったらちょっとビックリしたけど、喜んでくれたよ。それに、責任も持って頑張らないと、って…」
…まあ、言葉だけなら何とでも言える。
責任…僕だって感じてはいるけど、実際は不安しかないんだよな。
「梓は花木くんと一緒に暮らすんだよね?」
葵がそう尋ねると
「うん、そのつもり」
「ちゃんと生活していけるのかよ?…」
2人の間に割って入る。
「うんそれは大丈夫。卒業したらうちの学校の教師になるのは決まっているから。」
それって、親父と一緒の職場で働くってことだよな…
「親父はそいつのこと知っているのか?…」
「多分、顔は見たことあると思う。でも、私と付き合ってることは知らない…これから言うつもり」
「親父も驚くかもしれないぞ」
「うん…わかってる」
…親父もだろうし、お袋もだろうな。
僕とは違って大事に育ててきた、自分で産んだ娘だからな…
「お父さん、来年からは教頭先生になるみたいだし」
「そうなの?」
親父もそんな歳になったのか…
まあ親父は学園長のお気に入りだから、きっとその推薦もあったんだろう…
そんな中で、学校に通う娘の妊娠…しかも相手が新任でくる教師だなんて問題にならないだろうか?…
「梓…お前はどうするんだ?…このまま学校は続けるつもりなのか?…」