ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 655
「私がその人だったら、先生に会いたいと思うは…、娘さんのことがどうであれ、母親である前に…女ですもの…」
弥生さんの言葉に考えさせられる…
それは男の僕には一生分からないことかもしれないけど…
「親父はその女性と、いくつぐらいの時に付き合っていたんだ?…」
「ちょうど、高校生かその前後…匠が緑川と付き合っていたのと同じくらいの年齢だろうな」
…やっぱり、僕は親父の子供なのだろうか。
同じくらいの年齢で同じようなことを経験してるのって…そう考えてしまう。
「彼女は旦那と別れてな、優子と…そうだ、もう一人娘がいたんだな…」
「白鳥ゆかりさんだね」
「匠、知っていたのか…」
「僕が知ったのは今朝のことだよ…青山家の皆は知っていることだったみたいだけどさ…」
「ああ、別に隠すことでも無いからな…」
隠さなければいけないことは、他にあるからな…
「世間は広いようで狭いって言うけど、先生のお付合いしていた方が啓くんと血の繋がりがあるだなんて、ちょっと運命感じるは…」
「ああ…彼女と始めて関係を持ったのは、丁度今の啓くんぐらいの歳だったからな…」
「それだと、優子さんもゆかりさんも親父と同じくらいの年齢で…」
「ああ、2人の目を盗んでな…」
親父もなかなかやるもんだ。それこそ若気の至りというものか。
隣で弥生さんはニコニコ微笑んでいる。
「でも、大っぴらに付き合うには至らなかったのはなぜ」
「彼女のほうが、年の差を気にしていてね…」
「分かるはぁ…そういうことって歳上の女の方が気にするものなのよね…」
僕と弥生さんも、このことが別れの大きな一因となったんだもんな…
「年令なんて関係ないのに…」
僕は10年ぶりにこの台詞を言葉にした…
悩む弥生さんを納得させようと、何十回、何百回と言った台詞だった…