ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 643
僕は反射的に首を左右に振る…
それはそうだ…親父は僕が産まれてこのかた、ずっとこの重荷を背負い続けてきたのだから…
「お兄さんどうしたんです?柄にも無く真面目な顔しちゃってぇ〜」
啓くん;…その茶々が今は有難いよ;…
「おい、柄にも無くってなんだよ…お前が知らないだけで、普段は何時でも真面目な顔してんだぜぇ!」
「ああ、匠兄ぃの真剣な顔って家じゃ見たことないもんね」
梓まで話に乗ってきた。
…どうやら仲直りしたのは本当だね。兄としては安心しました。
「まあやるときはやる兄ぃだとは思うんだけど。東京の大学に合格するなんて思わなかったしねぇ」
「俺もあの時は地元でいいんだぞって言ったんだけどな」
…親父もいつもどおりに戻ったようだ。
「それゅあ17、8の若者にとっては、東京って都会が憧れだった訳さ。」
僕は当時の心境を振り返る。
「それ分かるはぁ〜〜私なんて今でもディズニーランド行く度に東京に住みたいって思っちゃうもの…」
栞さん;…東京ディズニーランドと言っても、あそこは千葉ですから;…
「でもお兄さん、どうして東京に…?」
啓くんはまだ不思議そうに聞いてくる。君も興味があるのかね。
「まあ、いろいろだよ」
確かに都会への憧れとか、そういうのがあったのだけど、一番は弥生さんと別れたのを忘れるため…というのが正直な理由だ。
もし弥生さんが旅立つことがなければ、地元の大学に行っていたかもしれないのだ。
「今の会社にいたら、また東京に転勤になる可能性も高いんでしょ?…」
「ああ…何やかんや言っても東京は大都市だからな…商談相手山ほどいるからさ…」
「ネット社会の今の世の中で、そんなことにこだわる必要あるのかしら?…」
「やっぱり額が張る仕事だと、ネットショッピングみたいにはいかないさ。」