ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 633
「ええ…分かっています…」
香澄が僕の膝に手を載せ、親父に向かいゆっくりと頷く…
「親父…もう1つ聞きたいんだけど…」
僕は膝に載せられた香澄の手を握る…
「ああ、何でも聞いてくれ…もう何も隠すつもりは無い…」
「それじゃあ聞くけど、あの頃美恵子さんは、和彦さんとも関係を持っていたんですよね?…」
「鈴田と青山がか…そこまでの話は俺は知らないな…」
「あの当時、美恵子さんは何も言ってなかった?」
「ああ、普段から自分のことはなかなか話してくれない子でな」
親父はうーんと腕組みして考える。
「青山からそう聞いたのか?」
「ええ…私は…」
香澄も歯切れ悪く言葉を返す。
どういうことだ?…
もし本当に美恵子さんが和彦さんと関係を持っていたならば、その時産まれた子供…要するに僕と巧は、和彦さんの子供だっていうことも充分に考えられるじゃないか…
いや待て…美恵子さんは親父と和彦さん以外にも関係を持った男がいないとも限らない…
「親父…親父が美恵子さんとヤッた時…美恵子さんはバージンだったのか?…」
「さあ…どうだったんだろう…アイツは何も言わないから…」
「…でも、してるうちにわかるんじゃないか?」
「俺もそこまで覚えているわけではないが…」
もう一度和彦さんにも聞くべきなのか…
「匠たちが望むのなら、遺伝子検査でも何でもするよ」
「それはそういうことにはなるとは思いますけど…」
確かに莫大なる財産を持った青山家…こういう問題が起きなくても僕は検査を受けさせられただろう…
「それは最終手段でさ…僕は和彦さんと美恵子さんにちゃんと話しが聞きたい…」
お袋が実の母親では無いと分かった今、僕が誰と誰の子供なのかということよりも、どうしてこんなことになったのかが知りたかった…