ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 497
「すみません、お待たせしました」
「いえいえ」
少しして杏さんが戻ってきた。
「…?お二人、何かありました?」
「なんでもないよ」
弥生さんがニコリと微笑んで言うのに、僕も頷いた。
「…そうですか」
僕たちは買い物を終えて、お屋敷に戻るのだった。
僕にそっくりだという男の情報は得られなかったけど、弥生さんと久しぶりに話せてよかった…
ここに住むようになれば、毎日側にいられるんだよな…
そう思うと心は弾んだ。
「お帰りなさいませぇ匠さぁん!」
笑顔で出迎えてくれる香澄…
弥生さんとしたキスが、なんだか後ろめたかった。
「うん…ただいま」
こちらに身体を寄せる香澄の頭を優しく撫でる。
「んふふ…んにゃん」
…まったく、子猫みたいなところは変わってないんだから。
「そういえば杏ちゃん、お父様は今日はいるんですか?」
「今日はゴルフで…夕方には戻られるかと」
「どうします匠さん…お父様に会って行きます?」
弥生さんから情報を引き出せなかった以上、ここは和彦さんに話しを聞き出したいところだよな…
「そうだね、久しぶりだから挨拶していこうかぁ」
「うわぁ嬉しぃ。それならゆっくりできますねぇ♪」
香澄がこんなに喜ぶんだったら、もっとちょくちょく連れて来るんだったね。
「ごゆっくりお過ごしください。宜しければお泊りのご用意もしますよ」
「うーん…そこまでかかるかな?」
「まあ、いつでもいいので」
杏さんはにこやかに笑って言った。
「お茶でも入れましょうか?」
弥生さんがフロアにいる僕たちに尋ねる。
「お手伝いしますよ!」
…香澄さん、君はお茶菓子が目的だね?