ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 48
「それより中に入りましょうかぁ。何か食べれるみたいだし」
…って、香澄ちゃん、君、朝ごはん食べたばかりでしょう!
ファミレスに入って注文もそこそこ、香澄ちゃんはドリンクバーとサラダバーではしゃぎ気味。
それを横目で見ながら僕は桜ちゃんと話をする。
「えっと、桜子さん?」
「桜で良いですよ。お嬢様からもそう呼ばれてますので」
「香澄ちゃんの家でメイドして、どのくらいになるの?」
「メイドとしては、丸3年ってとこでしょうか。お嬢様の家には、幼い頃から住まわせてもらってるのですけど」
「えっ?」
とすると、桜ちゃんの親も世話係とか…
「私、両親に捨てられて、施設に預けられたんです。そんな私を引き取ってくださったのが、お嬢様のおじい様だったんです」
…桜さん、苦労してるんだ…どうりでその歳でしっかりしている訳だな…
「そのおじい様ってお方は、今も御健在で?」
「いいえ、3年前に…
私、元々はお嬢様の遊び相手に引き取られたんです…」
…あ、ハイジとクララみたいな関係ね。
「それが3年前におじい様がお亡くなりになると…そういう訳にもいかなくなって…」
桜ちゃんの話は続く。
「私ももう捨てられるのは嫌だと思い、お嬢様のご両親に申し出たんです。そうしたら、青山家のメイドとして働いてくれないかと」
「なるほど」
「それで、3年たちます」
「メイドさんって桜ちゃんだけなの?」
「いえ、私以外に10人ほどいます。その中で私がリーダーという立場なんです」
「リーダーなんて凄いじゃないですか!」
「そう言っても、名ばかりなんですよ。1番長くお屋敷にいるだけですから…」
…そう謙遜するところも、メイドさんとしてリーダーになる資質があると思いますよ…
「ところで、今回の彼女の家出も、桜さんが手助けしたと聞きましたけど…?」
「ええ、お嬢様にはいろんな経験を積んでいただきたかったのです。
本当に柏原さんのような方と、初体験を向かえられてよかったと思っているんです。」
…あ、そこまで知っているのね。
「香澄ちゃんって、ご両親と仲が悪かったりするの?」
「そこまでではないですよ」
「僕は、香澄ちゃんに相応しい男なのかな…」
「大丈夫ですよ!お嬢様があんなに楽しそうにしてる顔、初めて見ましたよ」
「そう?」
「匠さんも、桜ちゃんも、何話してるんですかぁ?」
香澄ちゃんがようやく戻ってきた。