ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 47
幸せがいっぱい詰まった朝飯を、僕は今までの香澄ちゃん以上にたらふく食った。
「美味しいかったですかぁ〜?」
「はい!!こんな美味しいご飯、僕、生まれて始めて食べました!!」
…啓くん・・・香澄ちゃんは僕に聞いたんですがね…
「よかったですぅー♪2人にこんないっぱい食べて頂いて、私の夢が叶いましたぁ〜」
…その夢、僕が1人で叶えてあげたかったよ・・
「それにしても、皆さん起きてきませんねぇー」
「休みだから、皆、昼まで寝てるんじゃないか?」
「困りましたねー。ご挨拶できないんじゃ…」
「また来ればいいさ。それにこんな美味しい朝飯が準備してあれば、香澄ちゃんの気持ちは伝わると思うぜ。」
「そうですか…それじゃそろそろ時間もあるし…行きますぅ?」
「あ!僕も一緒に出ますよ。1人でいても暇なだけですから。」
…啓くん・・・君って奴は空気ってものを読めないんかぁ?
「あ〜ホントにぃ?今からファミレスってとこに行くんだけど〜一緒に行こうよぉ〜」
…香澄ちゃん、こんな奴にそこまで気をつかって、貴女ってホントいい娘過ぎだよ〜。
「け〜い〜く〜ん〜?」
…声を聞いて、思わず振り返る。
パジャマ姿の梓が満面の笑顔で立っております。
…しかし、明らかに怖いです。
「今日はさ〜、二人でデートの日だよね〜?」
「は、はい…」
…うん、これは、関わるのはよそうか。
「じゃ、僕は香澄ちゃんと」
「匠兄ぃ、いってらっしゃーい」
…何も無かったかのように、僕"だけ"に笑顔を向ける梓…怖い;
女って、浮気した亭主よりもその相手を恨むって言うけど…
梓ぁ…悪いのは啓くんで、香澄ちゃんに悪気なんて無いんだぁよ〜
「匠兄ぃ、何か言いたいことでもあるの?」
…やっぱ、怖い;
「い、いえ…行って参ります。。。。。」
お鉢が回ってくる前に、僕は香澄ちゃんの腕を取ると、そそくさとこの場を退散した…
「梓さん、どうかしたんでしょうか」
キョトンとする香澄ちゃん。
…彼女もかなり天然だとはわかってましたが。
約束の場所まで歩いて5分ほど。
5年もいないと、街の様子もだいぶ変わっている。
…ここにファミレスが出来るとは思わなかったし。
店の前に、若い女性が立っているのが見えた。
「あの人がそうなの?」
「たぶん…私服なんて滅多に見たことないから…」
近づくと、その彼女は明るく微笑んだ。
「お嬢様、お久しぶりでございます!」
「あー、やっぱり桜ちゃんだったんだー」
「はいー、で、そちらの方が匠さんですね?」
「あ、どうも」
「初めまして。香澄お嬢様のメイドをしている紺野桜子と申します!」
…香澄ちゃんとは対照的に、随分と滑舌がいいんだね。
「あ、匠…柏原匠です。」
僕は頭をかいた。
年上でありながら、こんな挨拶しか出来なかった自分を恥じる…
「桜ちゃん、そう言えばなんだけどぉ…伊藤啓くんって知ってますぅ?」
「はい。確か伊藤啓と言えば庭師の息子さんでは?」
「あっ〜やっぱりそうなんだぁ〜それなぁらぁここに連れて来ればぁよかったぁ〜」
…やっぱりそうだったのね・・・
ってことは、どっかの国の皇室から嫁いできたってのが・・・
香澄ちゃんのお袋さんってことですか・・・・・・・・・・