ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 461
その夜、夕食、風呂を済ませ後は寝るだけ、となったとき。
「匠、ちょっといい?」
リビングでくつろいでいるとやってきたのはお袋だ。
ちょうど香澄も妹たちも自分たちの部屋にいってて2人きり。
「うん、お袋、なんかあった?」
「ちょっとね。青山くんと、香澄ちゃんが出産したあとどうしようかって話があってね」
ああ…やっぱり和彦さんも悩んでいるのか…
「それで和彦さんは何だって?…」
「それゃあ口には出さないけど、涼香さんがあんなことになって、アンタたちと一緒に暮らしたいと思っていると思うはよ…」
「やっぱりお袋もそう思う?…」
「そうね…難しいところだけど…」
お袋も迷っているのは明らかだった。
「最終的には香澄ちゃんとアンタで決めるべきね、お父さんも私も、青山くんもそれに従うと思うよ」
「そうだね」
「互いの家はすぐ近くだから、たまに顔見せしてくれたら私は嬉しいわね」
お袋はそう言って笑った。
まあここで同居するって訳にもいかないし、とりあえずは何処で住むかって話しだよな…
「僕は、香澄の為にはあっちの家に行った方がいいは思っているんだ…」
「そうね…子供も産まれるし…香澄ちゃん一人では大変よね…」
「ああ、あっちには大勢メイドがいるから、助かるとは思うんだよね…」
「それが分かっていながら匠が踏み切れないのは…やっぱりお父さんの事があるからかしら?…」
う…それはまた勘の鋭い…
「お父さんも同じことを思ってるはずよ。後は匠と香澄ちゃんが話し合って決めればいいのよ」
「そ、そうか…」
「匠ももういい歳なんだから、自分のことはスパッと決めちゃわないとね」
「うん…」
お袋に背中を押された。
少し気恥ずかしいところはあったけど、僕の中では一歩前進できたと思っていた。