ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 434
「宏、単身赴任なんだって?…」
「はい…私たち家族も一緒に行くって言ったんですけど…」
アンナさんは少し寂しそうに俯いた…
「まあ子供たちの保育園のこともあるし、いろいろ大変なのよね…」
遥さんがアンナさんを庇うかのように横から入る…
そうだよな…
自分がそういう世界とは無縁なので、どこか他人事のように考えていた。
「それに、アンナのような綺麗な女の子…何かあったら…」
…それなのだ。
僕も、一番心配なのはそのことだった。
「みんな優しくて、私、嬉しいですよ」
アンナさんは笑顔を見せた。
「それじゃあ私は帰るとするよ…」
あの日と同じように、遥さんが僕らに気を使う…
「あ、そんな…よかったら遥義姉さんも一緒に…お願い出来ませんでしょうか?」
うぇへぇ?…
ア、アンナさん…今何っておっしゃいました?…
「…私に、って、私がナニすればいいの?」
遥さんは困ったような戸惑いの表情を浮かべる。
「私1人じゃ不安ですし…匠さんも…それに、義姉さんも、最近、ご無沙汰なのでは?」
「ちょ、アンナ…」
遥さんの顔がみるみるうちに赤くなる。
「そうなんですかぁ?遥さん…」
遥さんには会社で付き合っている男がいるって聞いたことがあるけど…もう別れたってことなんだろうか?…
その相手に関して遥さんは話したがらないので、敢えて聞くことはしなかったんだけどね…
「ふふふ、それは匠くんのご想像にお任せします。」
ほら、いつもそう言ってごまかすんだよね;…