ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 433
複雑な思いを抱きつつも、アンナさんのためなら、僕だって男らしく、約束は果たさなければならない…
『匠さん、また、してくれますよね?』
あのときのアンナさんの顔が、思い浮かんだ。
あっという間に家まで来てしまった。
遥さんがインターホンを押す。
「遥だよ、匠くんも一緒だよ」
インターホンからの返事は無く勢りにドアチェ―ンに続き、ロックが外された。
ドアから顔を出したアンナさんの驚いた表情を見て、アンナさんは僕が来ることを知らなかったのがわかった。
「遥さん…アンナさんに何も言って無かったんですか?」
僕は遥さんの肘を引っ張りながら小声で聞く…
「ふふっ、こういうことはサプライズがいいって言うじゃない?」
遥さんが悪戯っぽく笑う。
「匠さん…」
アンナさんはまだ大きな瞳をパチクリさせて驚いている。
「その通り、アンナの大好きな匠さんだぞ〜」
遥さんが僕の頭に手を伸ばす。
その力に促されるように僕は顔を突き出し、ニコッと笑う…
なんだか照れてしまう…
あの日は言ってみたら、遥さんに言われるがままアンナさんを抱いた訳で…
それに比べると、今日こうしてアンナさんに会いに来たのは、自分の意思でアンナさんを抱きに来たのだから…
「はい…ようこそ、匠さん」
アンナさんはまだ少し戸惑いながらも、可愛い笑顔を見せてくれた。
「どうぞ、お入りください」
「お邪魔します」
遥さんと共に、アンナさんの家の中に入る。
家にはアンナさん1人。
子供はやはり遥さんたちの実家のようだ。