ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 428
「なんだか、匠さんと一つ屋根の下で暮らすなんて…ドキドキしちゃいますよ…」
「あ?…ああ、そうなったらよろしく頼むよ…」
「もちろんです…毎日私がお背中流して差し上げますね…」
雪ちゃんは薄く微笑みながら指を立て、僕の腕をすぅ―と触ってきた…
「はは…それは嬉しいけど、香澄が嫉妬するだろうし…」
「じゃあ、お嬢様と2人でサービスですね」
…どこのお店ですか、いったい。
雪ちゃんは前職のせいで冗談に聞こえないんだよなぁ…
…その夜。
「今日は楽しかったです〜」
香澄がうんと背伸びしながらベッドに座る。
「久々にみんなと会えて良かったです」
「そうだね」
僕は香澄の肩をそっと抱いた…
「和彦さんや杏さんが帰ってきたらまた行こうな…」
「はい…しばらくお父様とも会っていませんしね…」
僕の肩に頭を傾けてくる香澄の髪から、仄かにシャンプーの香りが漂ってくる…
「子供が産まれてのことや、これから僕たちが住む場所のこと…和彦さんにも相談したいしな…」
「そうですね…出来れば私、もうちょっと落ち着いたらあのお家でみんなと一緒に暮らしたいです」
香澄はそう言ってはにかんだ。
「やっぱり、桜ちゃんがそばにいて欲しい?」
「はい…私、というよりも、桜ちゃんが一人だとかわいそうというか…」
香澄と桜ちゃんは幼い頃からずっと一緒だったから、余計にそうだろうね…
「ああ…桜ちゃんはともかくとしても、僕もいずれはあの家に住まなくちゃと思っているさ…」
僕は香澄の髪を解すように撫でる…
「いいんですかぁ!?…でもそうなったらなんかマスオさんみたいで悪いなぁ…」
香澄は僕の膝に手を置き、それをモゾモゾと動かす…