ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 375
…うう。可愛いこと言ってくれるじゃないんか…
それを言うなら、僕の方こそだよ…
「ホントのこと言うと…祐樹さんとお父様のことはきっかけの一つに過ぎなかったんです…」
…へっ?別に家出した理由があったの?
「私ね、実は自分がお父様の本当の子供ではないって、ずっと前から知っていたんですよ…」
「…そうだったの?」
「ええ…」
「誰かから聞いたの?」
「それもあるんですけど、まあ、いろいろ不自然なところとか、気づいてしまったんですよね…」
香澄ちゃんは話を続ける。
「お父様と私が、仲良くしてるのを見て、お母様が何かを心配したようで…ですけど、それは余計なお世話だったんです。以来、誰ともすれ違いになってしまって、些細なことで喧嘩して…」
「ショックだったんだから仕方ないよ…大人の僕だっていろいろ考えたからな…」
「はい…その後、お父様には実は本当の子がいるのも聞いてしまって…」
えっ?…和彦さんより早く、香澄ちゃんはそのことを知っていたのかよ…
「それで…その人にどうしても会ってみたくなったんです…」
えっ?…
「ちょっ、ちょっと待ってよ!…僕と香澄ちゃんとの東京での出会いは、偶然では無かったのかぁ?…」
思っていたことが口に出る。
「偶然?…まあ、匠さんと出会ったのは偶然であり、偶然ではない…両方です」
なんだか曖昧な答えを出された。
そりゃあ、東京に住んでるとは聞いても、どこにいるかなんてわからないだろうし、仕事を失ったとまではまさか知らないだろうし。
「でも、匠さんのお名前を聞いて、確信しました」
「ああそういえば…始めは、『お兄さん〜』って声掛けてきたんだっけな…」
「はい…あの時はまだドキドキしていたんです…」
そりゃあそうだろう…無謀過ぎるよ;…
「僕の顔も知らなかったんだろ?…」
「いえ、東京に行く前に探偵さんにお願いしてましたんで、だいたいの情報は入ってはいたんですけど…」