ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 368
それこそ僕だって和彦さんのことなんて言えない。
弥生さんと別れ、その夜酔った勢いで遥さんを…
「男なんてそんなもんだよな…」
「ええ…」
昔のことではあるが、やはり後ろめたいことだった。
「ところで…彼には、母親の違う息子がいるのは知ってるかい?」
う…;知ってるも何も、その子は毎日この家で寝起きを共にしていますよ;
「あ、はい;…伊藤啓くんのことですよね…」
「ああ、確か高校…」
「2年生の17歳、香澄ちゃんとは同学年ですよ。」
「ん?…顔見知りなのか?」
「実は啓くん、家の妹と付合っているんですよ…」
「そうか…だからなのか」
納得した様子の和彦さん。
「彼…啓くんにも、辛い思いをさせてしまったことだろうな…」
「和彦さんも、直接関係あるんですか?」
「彼のお母さんは、涼香が追い出したも同然でね…」
…女の戦いは怖いですね
「それでその人はどうなさったんですか?…」
さりげなく聞いてみる…
「流石に不敏に思ってな…涼香には秘密で、暫く匿っていたんだ…」
「それって…愛人みたいな?…」
「残念ながら匠くんが想像するような関係ではないんだ…弥生ともそうだが、僕は女性との間にも友情関係が築ける男みたいだ…」
どこか照れたように和彦さんは言った…
「羨ましいです…尊敬します」
「いや、君だって…匠くんは、僕の息子なんだからな」
「そうでしたね…」
お互いに、ようやく笑えたような気がした。
「ところで、その方のお名前は…」
「うむ…まあ、それは君もよく知ってるだろう?」