ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 313
「でも甘えてばかりはいられないから、折りをみてそれも断るつもりなんです…」
「そうなの?…お屋敷には幾つも部屋が余っているんだし、遠慮することも無いじゃない?…」
「まあそれはそうですけど、香澄ちゃんの側にいると、どうしてもヤってしまいますし…」
…あ、君たちって、そんなに頻繁にヤっていたんですか…;
純ちゃんは僕の方を見て俯いた。
「異常ですよね、私たちの関係」
「そうかもしれないけど、僕は素晴らしいと思ってるよ。純ちゃんと香澄ちゃんの間には、紛れも無く愛があるんだから」
「あ、ありがとうございます…」
顔を真っ赤にして、純ちゃんはまた俯く。
「それに、一人暮らしするにしても、お屋敷から遠いわけではないんだろう?」
「まあ、そうですけどね」
「そらなら寂しくなくていいんじゃないか?」
「はいぃ。匠さんも遊びに来てくださいよぉ〜」
「もちろん!喜んで!」
「その時はまたぁ…こうしてヤってくれますぅ?…」
純ちゃんは、既に力を無くした僕のモノを掌で転がす…
「はは…純ちゃんがいいなら、いつでもどうぞ」
「そのときはお願いしますね〜」
お互い、顔を見合わせて笑った。
こうして、純ちゃん…桃山純菜ちゃんは、青山家のメイドを辞め、荷物をまとめて去っていった。
…引っ越したのは青山家近くのアパートなんだけど。
…これが、後の人気漫画家『桃原ジュン』誕生の瞬間だった…
そのデビュー作『ほんの少しの勇気で・・』はベストセラーになり映画化までされる一大ブームともなったのだけど、そんなこと、今の僕は当然ながら知る由もなかった。
ましては、自分とのこの湖でのエッチが描かれると分かっていたなら…もう少しかっこいい台詞でも決めておけばよかったと後で後悔することにもなるのだけど、それさえもこの時の僕は考えられる訳はなかった。