ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 312
「ふふ、そうですかぁ〜」
純ちゃんもニコリと微笑む。
「これで私も、香澄ちゃんや桜ちゃんと一緒ですね〜」
…君も知ってたのね。
「メイドを辞めて、関係が一気にフランクになったね」
「私のほうが年上ですから」
それは聞かずとも分かっていた。
香澄ちゃんや桜ちゃんに比べると、純ちゃんはづっと落ち着いてみえる。
「今まで彼氏とかはいなかったの?…」
こんなに可愛いくて性格もいいのに、僕が初めてだなんてなんだか不思議だった…
「はい。特に興味なかったというか、恋人は二次元ばかりでしたから」
…それはそれは…桜ちゃんと近いものがあるかもしれないな。
「そっか…じゃあ、漫画家って純ちゃんにとって天職じゃないか?」
「ええ…ずっと、子供の頃からの夢でした」
瞳を煌かせる純ちゃん。
それこそ少女マンガの主人公のようだ。
「純ちゃんは、どうしてここのメイドとして働いていたの?」
ずっと気になっていたことを素直にぶつけてみる。
「それは勿論、香澄ちゃんですよ…私は香澄ちゃんが大好きなんです!」
きっぱりと言い放つ純ちゃん…
それを聞いて純ちゃんの香澄ちゃんに対する思いの深さを思い知った…
「純ちゃんは、本当に香澄ちゃんが好きなんだね…」
僕が言うと、純ちゃんはぱあっと明るい顔をした。
「はい…ですから、正直ここを離れるのが辛くて…」
「まあね、そうだね…」
「それでも、香澄ちゃんが私と離れたくないと言うので、無理を言って、お屋敷の中に私の仕事部屋を用意してくださると」
「そ、それはすごいね」
…それも愛の成せる業か。