ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 28
「えっええっ!?お、お母様!?」
香澄ちゃんもまたベタなりアクションだな。
「如何にも。私が匠の母親の柏原操よ」
何をもってそこでドヤ顔をする必要があるんだ、お袋よ。
「…で、ところで、この娘はいったい…」
「はい!青山香澄と申します!!匠さんとお付き合いさせていただいております!!!!」
…直球過ぎた。
面を喰らったお袋だったが、そこは大人。
直ぐ様に笑顔に切り替える。
「よかったじゃない匠。お母さんはあなたたちの味方よぉ。」
…おいおい、味方って何ですか?
「私が匠を授かったのもちょうど香澄さんぐらいの時、苦労はしたけど後悔はしてないはぁ〜」
…あ、そういう事ね。……てか!話が飛躍してません?
「まあまあ、立ち話もなんだし、入ってきなさいよ〜」
お袋は香澄ちゃんの手をとって家に招きいれる。
僕もその後ろからやれやれとついていく。
久しぶりの実家だ。
家の中もあまり変わってはいなかった。
リビングでは二番目の妹・栞が雑誌を読みながらお菓子を食べている。
「あれ、お兄ちゃん、帰ってきたんだ」
「んー…まあな。お前、大学は?」
「今日は休講になっちゃったー」
何年かぶりに会うというのに、その話しぶりはまるで昨晩にでも会っていたかのようで、それが返って僕の心を和ませた。
…それにしても、栞…随分と女らしくなったんじゃないか?
考えてみると、最後に栞を見たのは、まだセーラー服の時だった。
「げっ!女連れ?…前もって言ってよぉ〜!」
スッピンを気にしてなのか、栞は香澄ちゃんが部屋に入って来る前に、隠れるようにして部屋を出ていく。
「父さぁ〜ン!!大変〜!!匠兄ぃ〜がオンナ連れてきたぁ〜!!」…栞の大声
…オンナってことは無いだろよ
…てか、何で親父がいるんだ?
「開口記念日なの。だから父さんと私はお休みなんだぁ〜♪」
栞と入れ代わるようにリビングに顔を出す美少女…
「うわぉ!お前、梓かぁ〜!?」
…梓もまた、随分と可愛くなったものだ。
僕が家を出る前はまだ中学生…一番僕を兄として慕ってくれていた存在なので、ひときわ感慨深いかもしれない。
「えへへへ」
「なんだ、大きくなったじゃん」
「私だってもう高校生だからね〜?」
そうはいっても、兄である僕に対する態度は昔とは変わっていないようだった。