ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 179
ヤンキースの日本人選手は僕もファンだった。
自分を律するストイックな精神性に憧れ、あんな風に生きたいと思うことはしょっちゅうだった。
それでもそれを突き通せない自分を前に、自分の甘さを思い知らされることもしょっちゅうだった。
「桜ちゃんも野球好きなの?」
「はい…亡くなった父が、野球をしてたんです…」
そっか…桜ちゃんも大変な思い、つらい思いを乗り越えてきたんだよね…
「僕も昔は野球をやってたんだけどね」
「どうだったんですか?」
「下手糞で、なかなか上達しなくて、すぐにやめちゃったよ」
すぐに、というのはさすがに冗談だけど、少年野球チームは小学生のころしか入っていない。
もっとも、坊主にするのも嫌だったから、高校まで続けてなんかいなかっただろうけど。
「少年の匠さんかぁ…私ももっと早くに匠さんに会いたかったなぁ…」
「ガキの頃の僕なんて、ただの鼻垂れ小僧に過ぎなかったさ。」
「それならもうちょっと大きくなった匠さんに…そう、弥生さんと出会った頃の匠さんに…」
「あ?ああ…僕だってあの頃に桜ちゃんみたいな可愛い子に会っていたら、彼女にせずにはいられなかったかもしれないな…」
しかも、実家に割と近くに住んでいたというし、ね。
もうちょっと歳の差がなければよかったかな、なんて思うけど…
「私も、微力ではありますが、匠さんの力になれるよう頑張りますから」
「ありがとう、桜ちゃん」
青山家に勤める子たちって容姿もさることながら、本当に皆いい子ばかりなんだよな…
"女を見る目がある”って…こういうことなのかもしれないと、同じ男として和彦さんのことを妙に感心してしまうと共に、尊敬してしまう…