ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 125
それを思うと、男2人はかなり緊張するものだ。
ましてやその相手は彼女の父親。
「娘さんをください!」と頭を下げるのにはさすがにまだ早過ぎですが。
夕食を終える。
「匠くん、僕の部屋に案内するよ」
和彦さんから言われ、ついて行く。
長身のスリムな背中…
下着を着てはいない薄手のシャツからは、鍛えているのだろう、しっかりとした背筋が見えいた…
お袋と同級生ってことは、四十半ばだよな…
和彦さんの若々しさは、僕と同年代といっても通じるじゃないか?
そんなこと思いながら、前を行く引き締まった小ぶりの尻を見ながら後に続く…
「こっちだよ」
和彦さんに言われるまま、案内された部屋に入る。
「粗末な部屋でごめんよ」
和彦さんはそう言うが、全くそんなことはない。
男が普段使う部屋にしては整頓されていて、こぎれいだった。
奥の本棚には難しそうな本が並んでいそうだ。
和彦さんに促され、手前のソファーに座る。
「結構イケるらしいじゃないか…」
「え…?」
何を言っているねか分からずに振り返ると、部屋の片隅に設けられたバーカウンターで、琥珀色の液体をグラスに注いでいた…
「いやぁ、嫌いじゃないんですが…強くは無いんですよ…」
僕は昼間の失態を思い出し、顔を赤らめながら頭をかいた…
…そうして、お互いにアルコールが程よく入ってきたところで
「匠くん、君は、桜木操さんの息子だよね?」
「え、ええ、そうですけど…」
和彦さんがお袋の名前を出したことで、酔いが少し飛んだ。
「彼女との僕は、高校の同級生だった。ああ、うちのシェフの弥生さんもだけど」
…それは知ってます。
「…操さんは、僕の初恋の女性だったんだ…」