人生、いくらでもやり直せるさ 18
「悟志さん、とってもあったかいです……パパみたいで、なんだか懐かしい気持ち…」
「愛花ちゃんも、こうしてると娘にすごく似てるんだよな…」
「私たち、似たもの同士だったんですね」
「そうかもしれんな」
気がつくと日がだいぶ西に傾き、スマホを確認すると随分長い間ここにいたんだなと感じさせる。
「そろそろ行くか。愛花ちゃんもいるし、少しいい宿を予約したんだ」
「ホントですか?ありがとうございます」
喜ぶ愛花ちゃんの笑顔に俺も癒される。
そして俺達は恋人のように寄り添って車へと戻ったのだ。
温泉宿に着いた頃には日も暮れ、丁度食事時だった。
露天風呂付きの和室に夕食が運ばれてくる。
近くの漁港から直送の海鮮料理だと説明されたが、2人して思わず声が出るぐらい豪勢なものだった。
これだけ豪勢な食事が出て、部屋も露天風呂が付いて素晴らしいのだがリーズナブルな値段設定・・・
忙しくて殆ど旅行に行けなかった身としては、知らない間に良い時代になったものだと感心するばかりだ。
しかも、愛花ちゃんと言う連れが出来た事で余計に楽しくて出費も気にならない。
「お刺身が美味しい・・・」
「そうだね、好きかい?」
「はい!大好きなんです!」
そんな愛花ちゃんを見ながら俺も旨い刺身を堪能する。
彼女が口元を隠す手、その薬指には指輪が輝いている。
実はこれ、親父とお袋の形見の指輪で、故郷から持ってきた遺産の一つだった。
旅館に来る前に思いついて、要らぬ詮索を避ける為に有効利用する事にしたのだ。
「素敵ですね」
指輪を持ち出した理由や経緯を話すと愛花ちゃんは微笑みながらうっとりとそれを見つめる。
「パパとママも凄く仲が良くて私もいつかはそうなりたいなって思ってました」
愛花ちゃんも気に入ってくれてホッとしている。
こうやって食事しながらとりとめのない会話をしていると愛花ちゃんも普通の女の子にしか見えない。
食事を持ってきた中居さんに『奥様』と呼ばれて嬉しそうにしている辺りも何だか可愛らしい。
そんな楽しい食事が終わり、中居さんの片付けの合間に少し旅館のお土産屋を散策。
時間潰しして布団が敷かれた部屋に戻った。
「さて、お風呂にしようかな」
「はいっ!」
部屋の掃き出し窓の外。
そこには隣の部屋との間に柵のある小さな庭になっていて、そこには露天風呂が備え付けられている。
結構大きいのと、綺麗に整備された日本庭園風の庭と満天の星空。
愛花ちゃんが息を呑むのが見ていて楽しい。
「凄い・・・」
「そうだね、思った以上だ」
俺も素直に感心している。
そんな2人で裸になって、手を繋いで露天風呂に入ったのだ。
「悟志さんについてきて、ホントに良かったです…」
露天風呂のお湯の中に身を浸からせると、愛花ちゃんは俺の肩に身体を寄せてため息をつく。
「俺も愛花ちゃんと出会えて嬉しいよ」
小さな肩をそっと抱いてやる。
「悟志さんっ」
小さく囁いた愛花ちゃんに反応する暇もなく、唇を奪われた。