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隣人
【その他 官能小説】

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その(3)-2

 結衣の体を胸に抱いた昂奮は初めての女体に埋没する感激であった。いや、それ以上の高まりだったといっていい。初体験の相手はプロだった。震えるほどの快感と男になった感動に陶然となったものだが、いまは互いの夫と妻を裏切って全身を絡め合う潜めた肌の感触が緊張をもって心を痺れさせるのだった。

 玄関に入った時、ほのかに湯上りの肌が香り、倒れるように、黒髪が小山内の胸に飛び込んできた。
「奥さん……」
「ふしだらな女と思わないでください……」
背を抱くと温もりが掌を伝い、結衣の吐息とこもった声が洩れた。
(夢か……)
密かな予感を抱いていたとはいえ、小山内は一瞬思考力を失った。


「何も言わないで……抱いてください……」
「奥さん……」
「お願い……」
「しかし……」
玄関では外に声が洩れる。
「とにかく、中へ……」
結衣を抱いたまま奥へと進んだ。結衣は小山内の体にくっついて離れない。息は乱れてもう身を任せた状況である。
(いいのか?……抱いてくれと言っている……俺が誘ったのではない……)
 こうなれば流れに逆らうことはできない。
ベッドルームの前で立ち止まると結衣が首を横に振った。
「そこは、いや……」
彼女の腕が小山内の腰に回り、奥へと導いた。
「主人の臭いが、いやなの……」

 座敷には布団が敷かれてあった。
密着したまま倒れ込んで唇を合わせると結衣の体はすべてを捧げるように力が抜けていった。そのつもりでシャワーをすませ、すみずみ洗い清めて待っていたのだろう。

 シャツに浮き出た乳首は玄関で気づいていた。
(すぐ下に素肌がある……)
たくしあげると小ぶりだが形の良い乳房が現われた。
 うっすらと静脈が透けて見える白い肌。その可憐な膨らみを貪った。
「はうう……恥ずかしい……」
顎が上がって悶える結衣の半開きの口から大きな前歯が覗く。
いやいや、と首を振り、どうしていいかわからないのか、彼の腕を掴んだり離したりを繰り返す。
(処女のような愛らしさだ……)

 肉付きだけを見れば少女のようだが、腰回りは脂がしっとり滲んだ大人の様相である。下半身を露にして真っ黒な繁みをたくわえた赤い割れ目に息を呑んだ。堪え切れずに男根を待ち望むかのごとき股間の裂け目はねっとりと愛液に塗れていた。
 恥じらうような小さな胸とじゅくじゅくと煮えたぎる秘部。そのギャップがたまらない。

「そのままきて。お願い、早く……」
うつろな眼差しの結衣を見下ろしながら、小山内はズボンとパンツを脱ぎすてると一気に差し込んだ。
「うう!」
快感に唸ったのは彼である。まとわりつく膣壁の柔らかな感触に思わず声が洩れたのだった。
(気持ちいい……)
結衣の脚が絡んで、まるでペニスを引き込もうとするように腰を煽ってくる。その動きで膣も絞られ、微妙な圧迫が加わってきた。
 結衣と一つになっている!
実感はあるのにその現実が信じられなかった。

「ああ、感じる……小山内さん……すてき……」
小柄な女体が波打つのは健気にも見える。
 結衣の腰の煽りはペニスをなめすように続いた。
「奥さん……もう、だめだ……」
「いいのよ、出して、そのまま出して」
「でも……」
「大丈夫、今日は、いいの。出してちょうだい」
「奥さん、我慢できない」
「出して、出して」
直後に結衣は小山内に抱きついてのけ反った。
「出る……」
「イクわ、イク」
(ああ!結衣!)
久しぶりの全身を揺るがす放出感に気が遠くなった。

 やがて結合を解いて、脱力感の中、夢のような満ち足りた想いを縫うように結衣の言葉が訥々と流れてきた。
 
「あたし、もう何年も、主人と、ないんです……」
「……」
仰向けになった結衣の胸はゆっくりと波打っている。

「あの人、不能なの」
「不能?」
「EDなんです。見かけからは想像つかないでしょうけど……」
「いつからです?」
「四年くらいになります。ストレスなんでしょうか。店の経営がうまくいかなくなってから、だんだんおかしくなって……」
「そうですか……」
見るからに精力絶倫の巨躯の田之倉を思い浮かべ、言われてもなお信じられなかった。

「自分でもいらいらするんでしょうね。ときどき些細なことで怒り出して、暴力を振るわれることもあります」
「それは、大変だ……」
あの大男に殴られたら手加減したってたまったものじゃない。
「ケガをしたことは?」
「それはたいしたことはありません。ちょっと口の中を切ったくらいで……」
「なんてことを……」
「最近は一緒にいるだけで、息苦しくなって……。ごめんなさい……たまらなくなってあなたを求めてしまったんです……」
「そんなこと、いいんですよ……でも……」
だからといって、自分が何を出来るわけでもない。
「お力になれればいいんですが、僕にはどうしていいか……」
結衣が横向きになって小山内の胸にそって手を置いた。
「すみません。ご心配くださって……。これは私たち夫婦のことですから忘れてください。お金をお借りしたことだけで十分すぎます。ただ……」
結衣は身を寄せて彼の肩に唇を押しつけた。
「時々、こうして過ごしていただけたら……」
目を閉じた結衣の顔がいまにも泣きだしそうに歪んだ。小山内は彼女の小さな肩を抱き無言で答えた。


 



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