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透明な滴の物語V
【同性愛♀ 官能小説】

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ワインのあとで-5

その嗚咽は、母の病院の続きであることが佐和子には分かった。
母の病室に到着した時も、同じように泣いたに違いなかった。

佐和子は、胸のなかで泣きじゃくる聡美の背中をさすった。
それは本当の母親と娘のようだった。
「いい、聡美ちゃん。よく聞いてね」
佐和子は、少し落ち着いた聡美に語りかける。
「今夜だけは、私が聡美ちゃんのお母さんなんでしょ?だから、今から私の言うことがお母さんの言葉よ」
佐和子の目は、我が子を包み込むように優しかった。

「お母さんは、ちゃんと聡美ちゃんの気持ちを分かっていますよ。聡美ちゃんがお母さんのことを好きだったことも。お母さんに感謝していたことも。ちゃんとお別れを言いたかったことも。ぜんぶ」
聡美の目から止めどなく涙が流れる。
「だからいいの。最期にお別れできなくても。ちゃんと聡美ちゃんの気持ちは伝わっているんだから、お母さんはそれで充分よ」

それを聞くと聡美はまた佐和子の胸で泣きじゃくった。
「お母さん…」
聡美の涙がパジャマを通して乳房に滲んだ。
それは、聡美の想いが母に到達したかのようであった。
佐和子が聡美の頭を撫でる。
聡美の気が済むまで泣かせてあげるつもりだった。
佐和子はいつまでも頭を撫でつづけた。

「ねえ、お母さん。あそこ、触って」
少し落ち着いてきた聡美が甘えた目をする。
佐和子は、なにか思いついたようだった。
「ちょっと待っていてね」
そう言うと、一旦、聡美から離れ客間を出ていった。

戻ってきた佐和子が持っていた物を見て聡美は驚いた。
それは、コンドームとベビーオイルだった。
「それ、旦那さんのコンドームでしょ?」
聡美は、夫婦生活の生々しさを見たような気がして顔を赤らめた。



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